通説を覆す。膨大な証拠をもとに冷静に、成功法則を提示『残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する』

オーディオブック

著者紹介

エリック・バーカー(年齢非公表)
『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙、『タイム』誌などが度々その記事を掲載し、米最重要ブロガーのひとりとされる。脚本家としてウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、20世紀フォックスなどハリウッドの映画会社の作品に関わった経歴をもち、任天堂のゲーム機「Wii」のマーケティングの指針を助言するなど独自の研究に裏打ちされたビジネス才覚は一流企業からも信頼が厚い。世の中のありとあらゆる成功ルールを検証した『残酷すぎる成功法則―9割まちがえる「その常識」を科学する』は、初の書き下ろしにして全米ベストセラーになり、邦訳も12万部(電子書籍含む)突破した。

橘玲(監修・翻訳)

早稲田大学第一文学部卒業。元・宝島社の編集者で雑誌『宝島30』2代目編集長。日本経済新聞で連載を持っていた。海外投資を楽しむ会創設メンバーの一人。2006年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補。デビュー作は経済小説『マネーロンダリング』。投資や経済に関するフィクション・ノンフィクションの両方を手がける。

目次

  • 序章
    なぜ、「成功する人の条件」を誰もが勘違いしているのか
  • 第1章
    成功するにはエリートコースを目指すべき?―
    リスクを冒さず、親や学校から言われた通りにするのは得か損か。高校の首席、無痛症の人びと、ピアノの神童から得られる洞察
  • 第2章
    「いい人」は成功できない?―
    信頼や協力、親切について、ギャング、海賊、連続殺人犯から学べること
  • 第3章
    勝者は決して諦めず、切り替えの早い者は勝てないのか?―
    道のりが困難でも最後までやり遂げる是非について、海軍特殊部隊シールズ、見合い結婚、バットマン、オンラインゲームから学べること
  • 第4章 
    なぜ「ネットワーキング」はうまくいかないのか―
    人質交渉人、一流コメディアン、史上最高の頭脳を持つ人から、人脈づくりの最強戦略を学ぶ
  • 第5章 
    「できる」と自信を持つのには効果がある?―
    チェスの達人、特務機関、カンフー詐欺師、恐怖不感症の人びとから、自信と妄想の境界を綱渡りする術を学ぶ
  • 第6章 
    仕事バカ…それとも、ワーク・ライフ・バランス?―
    どうやって家庭と職場の調和を見つけるかを、スパイダーマン、アルバート・アインシュタイン、チンギス・ハンから学ぶ
  • 結論 本当に人生を成功に導く法則は何か…

読むべき人

  • 成功法則本を読んでいるが結果が出ない人
  • 自分に大きな欠点があると思っている人
  • 刺激が強く都合が悪いが、本当のことが書いてある本が読みたい人

国民が成功法則を守って、最大の犯罪国になったモルドバ

冒頭で、自転車レースの歴代最強チャンピオンのレースに勝ち続ける原因を「強迫観念」であるということを突き止めた例を挙げている。そのチャンピオンは、レースで負けると失うものを想像し、絶望の中で発狂して爆走して、結果的にダントツの成績を収め続けてきた。ときには、チームメートに狂った行動をしたり、試合期間中に体を壁に叩きつけるなどの行動さえ起こしてしまうのだという。

この例は、通常イメージされているキャプ翼的・スポコンな、スポーツスター=プレイを楽しむ像とは程遠く、どちらかといえば、ドラマや映画で描かれるスポーツキャラクターの敗者のイメージに近い。それがダントツのキャリアを作り上げているという真実。しかもこれが現実のプロスポーツではどうやら小数派ではないという、事実は興味深い。

また、一般的な成功法則の一つであるマキャベリの『君主論』(皮肉屋や悪人が結果的に成功者なりやすい論)を支持する人が急増し、国民の多くが賢くこの行動をとったことで地獄に落ちたモルドバ(旧ソ連領)の例も前半でてくる。これは、サッカー先進国(フェイクを使うスポーツ)であるブラジルやアルゼンチンがいつまでも、経済格差が酷く、特にアルゼンチンなどは国家デフォルトを繰り返す現象を、端的に表しているようにも思える。

つまり、あなたが信じているその『成功法則』は、調べて証拠を集めていくと、ただ単に周りの人と逆のことをしているだけの、単なる「目立ち」の法則である場合があり、根本的な『成功』とは程遠い可能性があるのだ。

そんな真実が、本書には豊富に記載されている。

世界エリートは日本人より残業し、家庭を破滅させている

報道のメリットがないと世の中には情報が広まらない。
都合が悪い情報は、なおさらである。
本書ではそれらに関しても、深く触れられている。

たとえば、ポジティブシンキングによって、体から健康を促す分泌物が発せられることは一般的に知られている。本書では、IBMのスーパーコンピューターと、チェスの世界チャンピオンが対戦した時に、たった一回のネガティブな思考によって、凡ミスで世界チャンピオンが負けた例を出している。ネガティブは、確かに失敗を誘発する。その点で、ポジティブは成功に欠かせない要素に思える。が、それは、ポジティブシンキングは、単なる継続性の必要な要素であり、冷静な思考も継続させるものだからである。

しかし、一転、評価の仕方を考えると、ポジティブシンキングは、判断と結びつくと地獄となるケースが多い。才能がないのに抱える大きすぎる夢であったり、国政を左右する政治的判断であったり、つまりエビデンスを無視しすぎる判断のきっかけにポジティブさが絡むときに、歴史的な悲劇・惨劇や個人の人生の無駄などが発生するのである。これは本当に多い。

これの一つの例として、現在のシリコンバレーで働く若手重役たちの離婚率の例やアインシュタインや伝説的メジャーリーガーのテッド・ウイリアムスの不幸な結婚生活のケースを出している。

彼らは、仕事での成功をポジティブさもって極度のストレス乗りきり、物凄い残業をしている。そしてその生活の倫理観を、私生活にも持ち込んで知っているので、地獄に落ちているのである。人間の能力的にバランスが取れないだけ、とも思いがちだが、これは本でいうにはポジティブシンキングの悪弊だと分析している。確かに、そうかもしれない。ハードワークな偉人でも子育てに成功し、親子で歴史に名を残す人たちも少なくない。その辺の、都合の悪い事実は、私にとっても今でも読み返すくらい重要である。

関連書籍:GAFAM社員による「同僚・社会のベストな無視の研究」。生まれながらの効率化社会にあらがう『時間術大全』

卵を入れる手間を復活させ、ヒットしたケーキミックス

成功した、とか、満足した人生にする、という考えにも本書は疑問を投げかける。
実は、一番大事なのはこの部分かもしれない。

とある食品会社が、簡単にケーキが焼けるケーキミックスを発売したが、全くもってヒットしなかった。その後、同社は死に物狂いで「ケーキを焼く」ということに関してのあらゆる調査を行う。そして分かったことは、ケーキを焼くということはアメリカ人の母親たちにとって犠牲行為の一つで、それをすることによって子供たちの信頼を得られ、本人も満足するという事実を発見した。

その後、同社は焼くだけでよかったケーキミックスに、卵の混ぜる行為を復活させた。これによって、同社のケーキミックスは大ヒットしたという。

このような本書の具体例は、非常に多く、結構涙の出そうなインパクトを持って、成功希望者の脳みそをえぐる。ほんとに凄い本だと思う。

以上、ざっとした解説である。同書は分厚いため、ここで語られているのは60分の1くらいのものだ。このような真実の成功法則を知りたい人は、ぜひ読んでみて欲しい。

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