過剰リモートワーク時代による労働地獄を生き抜く。コロナ以前に多くの未来を予見した書籍から、今、何を学ぶか?『ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>』リンダ・グラットン

オーディオブック

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著者紹介

リンダ・グラットン (1955年 – ) は、イギリスの組織論学者、 コンサルタント、ロンドン・ビジネス・スクールの管理経営学教授及び彼女自身の組織行動論(英語版)上の実績で有名なHot Spots Movementの創業者である。本作の続編「LIFE SHIFT – 100年時代の人生戦略」は2016年にフィナンシャル・タイムズ・マッキンゼービジネス書籍賞の候補となった。

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目次

  • 働き方の未来は今日始まる
  • 働き方の未来を予測する
  • 第1部 なにが働き方の未来を変えるのか?
  • 第2部 「漫然と迎える未来」の暗い現実
  • 第3部 「主題的に築く未来」の明るい日々
  • 第4部 働き方を“シフト”する
  • 未来のために知っておくべきこと

概要

10年以上先の未来を的確に予想し、リバイバルヒットした珍しい書籍

2012年に書かれたこの本は、2025年までの労働状況を未来予言するという実に挑戦的なテーマで書かれた。そして、2020年に再び注目を集める。

コロナウイルス感染症の世界的な蔓延で、リモートワークが多く発達して、労働環境が変わった時に、再び大きな注目を集めた。多くのことを的中させたからだ。

既に見えていた“リモートワークの功罪”

本書では、クラウドコンピューティングと長寿化による大胆な労働変化が、やがて2020年代に、重役につき始めるY世代(1990年代に10代の重要な時期を過ごした世代)によって、もたされるだろうと予言して、見事的中させている

予言の見事な的中の他、注目すべきは、2020年のさらに少し先の未来である2025年までをさらに予言しているところである。これは、リモートワークがさらに拍車がかかり、過剰なリモートワーク信仰や、また労働時間・ストレスが無尽蔵に増大する結末までを含んでいる。また、リモートワークが適さない業界でのリモートワーク崩壊※も記述している。

※2021年末に発売された『コール オブ デューティ』(アクティビジョン社)は、制作環境がリモートだったが故に、不具合を出しまくり、アクティビジョン社の株は暴落する。それによって、同社は年明け、マイクロソフトに買収されて、安く買い叩かれてしまった。

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このような事態から、アメリカではその後『脱・フル・リモートワーク』を唱える企業も続出した。あくまでリモートワークは、コスト削減や育休などの福利厚生面での導入としての見直しが進んでいる。万能ではなく、むしろ害悪の側面があることが知られることになった。

以上を考えると、すごい書籍である上に、恐ろしい未来予見もされた書籍だといえよう。

ただ、その恐ろしい未来に対しても著者は果敢にその解決方法を模索している。

Q:読むべき人はどんな人か?

A:労働者全般だと思う。

著者の予測した未来は、コロナによってかなりの部分が前倒しで実現された。これは本当に驚くべき内容で、こういう本が出版されること自体、とても珍しい。

Amazonレビューの悪評は、コロナ以前に書かれたものが多く、コロナ以後は絶賛が絶えないのはこの点によるところだと思う。コロナ感染症が発生するまでは、絵空事を言っている、変なおばさんの書籍だったが、その価値観が一気に変わったのを、Amazonレビューなどで見ることができる。

Q:コロナ後の的中に関して

A:彼女の予言がなぜ当たるのか?

彼女は技術進歩による「未来に対しての消極的な常識」が、いかにして崩れていくのかを予言した。決して、妄想しているのではない。簡単にいうと、マイナス思考だった。だから当たった。

技術もどういうものがよくなり、どういうものが広まるのか? を判断するには、とりわけ現実的なマイナス思考が必要だ。彼女はその持ち前の冷酷な判断でジャッジしている。

Q:なぜ、Y世代を未来予測の中心に考えたのか?

A:本書で取り上げられているクラウド技術は、全て10年以上前に出来上がっているものばかりだが、導入が年寄り世代によって阻まれていることも本書では書かれていた。

例えば、アップルのiPhoneなどのように、既存の技術の寄せ集めでも、使う人の数が多くて、その爆発力が大きければブームになりやすい。そこには、テクノロジーにすぐに馴染める世代のマーケティングが必須となってくる。

要は、海外も日本と同じような、ローテクなおっさん世代に当たるものが、かなりの長期間、就労環境の効率化を妨害していたのだろう。そのようなイノベーションは、デジタルネイティブで、新技術によってポジティブな思いを何度もしてきたX世代以降の人間にしかできないことだったのだ。

世代のズレを埋めるために、あえてY世代を選んだ

その前提で、X世代よりワンテンポ遅れたY世代が最適だったのは、中国・東南アジアの世代に先行していた日本やアメリカの世代が中国や東南アジアに合わせる、という状況が起きたからではないかと思う。

予想当てるためには、世界のエリア間のタイミング違いや世代のズレを埋めるような、なんというか余白というか時差の推測が必要があり、そのために人口網羅する必要がある。一般的に、ヨーロッパよりもアジアの方が、社会現象は一般的に遅れる傾向にある。その帳尻をあわせるためには、一世代遅らせる必要があったのだ。そのへんも本書を読むことでよく理解できる。

そういう意味で、彼女の本には時間的なタイムラグが独特の書き方で描かれている。

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