部下の裏切り経営・買収の失敗等。バフェットの“人を見る目”にフォーカス『バフェット帝国の掟』ローレンス・カニンガム&ウォーレン・バフェット

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著者紹介

ローレンス・カニンガム(1962〜)

ジョージ・ワシントン大学教授。1990年代からウォーレン・バフェットの株主への手紙を『バフェットからの手紙』として出版し続け、投資家・経営者としてのバフェット研究の第一人者である。

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そもそもの専門は『企業文化と企業統治(ガバナンス)』

カニンガムのそもそもの専門は、ガバナンス(企業統治)であり、提出された50の論文と12に著作は、法務に関してはアメリカの弁護士界で標準となっている。

バークシャー・ハザウェイの研究は「リスク移転・解決」という分野で生かされる

カニンガムの大きな業績の一つに、リスク移転に対するソリューションの開発がある

物的損害や自然災害とは関係のないリスク=人脈・人為リスクを移転するために、バークシャー(バフェットの経営手法)の研究はなされ、その結果さまざまなメソッドを生み出している。

目次

  • 日本語版への序文
    コロナ禍でより鮮明になったバークシャーのビジネスモデルの価値
    多くの記事の見出しと異なり、パンデミックをうまく乗り越えた
  • プロローグ 信頼という名のアメ
    バフェット帝国のシンプルな掟=仲間に対する信頼
    買収候補となる企業が満たすべき4条件とは
  • Part1 組織マネジメントの掟
    Chapter(1) プレイヤー ── さびれた繊維会社を世界一の投資会社に変身させる
     ナンバー2:マンガー
    Chapter(2) パートナーシップの慣習 ── 株価が30万ドルになるまで
    Chapter(3) 経営手法 ── キャッシュを生み続ける美味しいビジネスモデル
  • Part2 信頼と委譲の掟
    Chapter(4) 買収 ── 人への信頼こそが巨利の源泉
    Chapter(5) 取締役会 ── バフェットの人材育成術
    Chapter(6) 社内事情 ── 世の中の逆を行く「非ガバナンス」の組織
  • Part3 投資の掟
    Chapter(7) 対比 ── 最初は「門外漢の乗っ取り屋」だった
    Chapter(8) 比較 ── 買収後の見事な経営が数々の伝説を生んだ
  • Part4 課題克服のための掟
    Chapter(9) 判断 ── 判断ミスはコストのうち
    Chapter(10) 大衆の認識 ── 注目されすぎる代償
    Chapter(11) 11規模 ── 「巨大すぎる」という疑念との闘い
    Chapter(12) 12後継 ── 「いつか訪れる最期」へのバフェットの回答
  • エピローグ 無慈悲という名の鞭
    大きな批判を呼んだバフェットの失敗
    バフェットが決して容赦しないこと

ブログ主の勝手なまとめ

バフェットの投資手法に欠かせない“人を見る目”にフォーカス:数字や専門用語を全て排除

バークシャー・ハザウェイの株主総会は、バフェットが直筆で書かれた“株主への手紙”を、自ら読み上げるスタイルで有名だ。オマハで開催されるこの総会には、多くの投資家がおとづれ、彼の話に耳を傾ける。それによって、投資家は成長し、多くの情報も得られるのだと言われている。

また、株主総会に合わせて「バフェットと昼食する権利」が、毎年販売されている。200万円で売り出され、今まで平均して2〜3億近辺で落札されてきたいわゆる、ランチミーティングチケットである。収益は、毎年慈善団体に寄付されてきた。

このチケットは2022年で廃止となることが先日報道された。

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これは単なる「有名人とのお食事会」ではなく、これまでも名だたる米国の経営者や著名人が落札してきたし、中には後にバークシャー・ハザウェイに入社し、バフェットの後継者と目されたテッド・ウェシュラーなども名を連ねる。

つまり、有力な人物をさらに上のレベルに育てるというバフェット独自の手法だといえる。

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本書は、難読で有名な『バフェットからの手紙』シリーズの数字や高等な経営学、株式用語などを排除した書籍だといえる。読みやすく、わかりやすい。そして、最終的には『バフェットからの手紙』と同様の、株式投資に欠かせない経営の人事的ね選球眼を養える作りになっている

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裏切られるのを恐れない“人間性重視の経営・投資手法”

本書の構成をざっと説明すると以下の通りになる。

  • バフェットの考え・バークシャー歴史・経緯の紹介
  • 成功例を中心に、バフェットの人柄主義を解説
  • バフェットの失敗談を軸に、具体的なケースを多数開示

本書は、前半部分(40%くらい)は、、まるでバークシャーとバフェットの宣伝峰ではないのか?と思うくらいの穏やかさだが、後半に入ると一転して、かなり厳しいきつい本となる。会社を経営していたり、部下を引き連れている人にとっては、目も当てられない内容が続くのだ。

インサイダー取引疑惑で、バークシャーの評判を著しく落とした「ソコル疑惑」

関連記事:元バフェット氏後継候補、インサイダー取引疑惑一段と

バークシャーの次期オーナーとなると言われていたソコル氏は、バークシャーの買収先企業の株を事前に何度も取引しており、バフェットによって退任の判断を下された。

後半部の数々の失敗の中で、本書の最大の読みどころは、デービッド・ソコル氏によるインサイダー取引疑惑の部分である。

『バフェットからの手紙』でも最も重視されていた『経営者の性格・適正』の部分において、バフェットの選球眼は鋭く、厳しい。だが、一度認めると、ほぼ放任的になることで、これまでバークシャーは何度か大きな危機を被ってきた。

その企業版が退廃したソロモンブラザーズの買収・経営参画事件であり、バークシャーの企業内ではデービット・ソコル取締役のインサイダー取引疑惑である。

バフェットでも、欲がかさんで性格が変わるところまでは、読むことができない

一連の内容の中で、徐々に明らかになってくるのは、バフェットのような超越した人間であっても、人間の変容は予測できないという真理である。

ただし、本書にはあまり詳しくは書けないが、騙されたり失敗した時の彼の考え方、スタンス、身の振り方に関して結構詳細に書かれており、参考になる。

それでも『人格重視』のスタンスの方が“損失が少ない”という事実

近年、SDGs(持続可能な企業進化目標)やESG(クリーンな事業・経営スタンスの構築)というキーワードが台頭してきた。これらは、たとえやられ放題、騙され放題の企業であっても、正しさにこだわれば、メリットの方が大きいという裏付けがあって初めて実現したものだ。

そういう意味で、本書を読むにあたって、一番感じるのは、これらのムーブメントの中心にはやはり「潔白さ」をベースに投資家と経営者であったバフェットの存在があったということだろう。

企業文化が腐敗して堕落しやすいと言われるコングロマリットを50年にわたって率いてきたバフェットのスタンスは、彼の人生がいかに“先取り”だったのかを考えさせる。

Q:どんな人が読むべきか?

A:『バフェットからの手紙』に挫折したが、本人公認以外の映画・書籍などでは物足りないと感じる人に最適な書籍。

バフェットに触れた書籍、映像コンテンツは実は非常に多い。

だが、バフェット自身が公認してコンテンツ作りにおいて深い情報開示をしているのは、本書の著者であるローレンス・カニンガム以外には実質存在していない。

これがもたらす事象は、バフェット公認コンテンツの高難易度化であり、バフェット非公認コンテンツの陳腐化・表面情報化(クソコンテンツ化)である。

そういう意味で、本書は公認ライターによって書かれた珍しい読みさすさを持っている書籍だ。バフェットに興味はあるが、投資や経営にさほど詳しくない。そんな人に本書はおすすめである。

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