金持ちへの嫉妬・差別との戦いの記録。資産拡大方法は、嘘や隠し事が多い印象。コミカルだが注意して読むべき本『私の財産告白』本多静六

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著者紹介

本多 静六(1866〜1952)

日本の林学者、造園家、株式投資家。

埼玉県生まれ。苦学の末、1884(明治17)年に東京山林学校に入学。一度は落弟するも猛勉強して首席で卒業。その後、ドイツに私費留学してミュンヘン大学で国家経済学博士号を得る。

日本の「公園の父」といわれる。苦学して東大教授になり、「月給4分の1天引き貯金」を元手に投資で巨万の富を築き、大学定年退官と同時に全財産を寄付した。ドイツ留学組の同好会を主催し、渋沢栄一などの財界の顧問なども歴任。学会や財界への影響力も強かった。

目次

  • 私の財産告白
  • 貧乏征伐と本多式貯金法
  • 金の貯め方・殖やし方
  • 最も難しい財産の処分法
  • 金と世渡り
  • これからの投資鉄則
  • 私の体験社会学
  • 儲かるとき・儲からぬとき
  • 儲ける人・儲けさせる人
  • 人間的サラリーマン訓
  • 人を使うには・人に使われるには
  • 平凡人の成功法

要約(ブログ主による勝手・強引なまとめ)

前半の一部は『バビロンの大富豪』と同じテーマで、給料の一部から定期積み立て貯金をして、自分のわかる範囲、興味のある範囲で保守的な投資をすると言う内容だ。

はっきりって言って前半部分は、世間一般で言われるようなそんなに重要ではない。

貯金の概念に関しては『バビロンの大富豪』の方が、精神論や根性論、具体性などの記述があるため参考になる。貧乏人に対しての貯金のすすめとしても『バビロンの大富豪』が優れている。

著者の経験談としての “金持ち差別・金持ちへの冷笑” 部分が読み応えあり

著者が本書を書くきっかけとなったのは、東京大学の教職者の中で募られた募金で起きた事件だった。通常、同僚たちが1円(現在の1万円程度)の募金をしていたところに、著者が一千倍に当たる1000円(1000万円以上)を募金しようとした時に、事件が起きたのだ。

良からぬ悪質な投資を疑われ、東大の職を追われかけたことにより、投資方法を公開

『私の財産告白』という本書のタイトルをよく見て欲しい。

本書は、あくまで人にものを教えるのではなく『告白』なのだ。しかも、形式としては罪の疑いがある人間の罪状告白的な意味合いだ。だが、当然、本多静六自身は、反省などしていない。

本多静六の投資手法は「逆張り」と「バリュー投資」:ドイツ学者から教わる

その懺悔(ざんげ)の『告白部分』が前半であり、後半部分はそこに立った顛末や教訓・人生論である。それを目次として『私の財産告白』と『私の体験社会学』と分けている。

貧乏な出の著者は、20代の頃に、子供の教育や妻との関係で、貧乏の経験をさせたくない、教育や家庭生活の可能性を狭めたくない、という思いから給料から『4分の1点引き貯金』を始める。それらの金を利息がつく、株や値上がりしそうな山林を買うという方向で増やした。

この投資方法は、誰から教わったかというと、ドイツに留学した時にミュンヘン大学の教授から教わったと言う。おそらく、ユダヤ人系の学者だろう。

ラストは、金持ちにありがちな“出口戦略のウロウロ感”で終える

そうして本多自身は当時の2億円(現在の2兆円ほどか?かなり膨大だ)の資産形成に成功する。しかし、あまりに高額の資産を持ちすぎてしまったために、処理に困り、遺産として残すわけにもいかず、生きているうちにどうにか社会に還元しようと思った。

そんなこんなの息子たちに残すメッセージ的な意味合いの文章が書かれて終わりだ。ベストセラーになったものの、読み終えた読者はどちらかといえば、私書として意味合いを強く感じろうだろう。

Q:どんな人が読むべきか?

A:日本人の資産家、もしくは資産家予備軍。

嫉妬というのは国民性がよく出ると思う。と同時に、国によって全然違う。ここに書かれたその嫉妬(東京大学内の揉め事・騒動)は、現代の日本人でも非常に役に立つ。

だからと言って、著者が取った『資産形成方法を馬鹿正直に開示』することは、いいかどうかはわからない。というか、多分ダメだろう。なぜなら、そっちの方がむしろ、周辺をざわつかせるし、再現性がないのにあるように見えて、悲劇を産む可能性があるからだ。

それに後述するが、本書には疑惑も多くある。

なので、一番いいのは『自分が金持ちになったら』的な夢見心地で楽しく読むのがいいと思う。

Q:資産づくり本としては役に立たないか?

A:立たないと思う。使えない。

なぜなら、著者が大きく資産を増大させたのは山林を買うと言う行為だからだ。そこで安く買い叩いた山林を、それらを三井や住友の財閥が買ったのだ。

ここで、おそらく、著者は嘘をついている。

本書では、農園学や公園学的に優れた山林を先物買いしたと、書いているが、普通に考えたらそんな話はおかしい。どう考えても、彼がニッケルや亜鉛、銅や鉄などをはじめとする金属・重化学素材の知識や先見性があって、それで山林を買って密かに鉱山資源の探索をした可能性の方が妥当だ。

でなければ、財閥が買うはずがない。

たぶん、彼は軍や産業に精通していたのだろう。東大教授あるということと留学ドイツ組の大規模同窓会を率いた情報網も関係しているはずだ。

そういう意味で、このような不動産購入は一般人には不可能な例だと言える。

Q:逆張りについてはどうか?

A:シンプルだがこちらは現代にも使えるかもしれない。しかし、やはりここでも著者がついているであろう嘘の可能性を先に言っておきたい。

本多静六は、造船・運輸株が不況によって一時的に暴落した時に、大規模小運輸して、暴騰した後売却した経験を記述している。買いから売却するタイミングもジャストすぎるのだ。こんなことは、いくら現代のチャーティストでもできる人は少ないだろう。

これらもまた、彼の軍への精通ぶりが隠された記述だと思う。

だが、これに関しては現代もコロナショックやリーマンショックで、一般人の中から富豪が登場していることを加味すると面白く読める部分だと感じる。

最後にまとめると、本書のそぼくで時にはこっけいな書き方は、読み進めていくうちに著者が当時では超エリートに属するドイツ帰国組で東大教授だと言うことを忘れさせる。

たとえ貧しい出というのが、正しくてもそこを忘れないようにして読めれば、本書から得られるものは少ないと思う。世間的な本書への評価は、ほとんどこの部分が抜け落ちている。

つまり、注意して読むべき本書は書籍だ。

本書はオーディオブック読み放題に収録されています。

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