著者紹介
1923年シンガポール生まれ。政治家、初代首相。首相退任後、上級相、内閣顧問を歴任した。 初代首相就任以降、長期にわたり権威主義的政治体制、いわゆる「開発独裁」を体現し、独裁政権下ながらシンガポールの経済的繁栄を実現した。2015年に逝去。
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本書を読むべき人
- 世界情勢を知りたいのに時間がない人
- シンガポール建国の父リー・クワンユーを知りたい人
- 特にアメリカ・中国・インドの難しい関係をすぐ、簡単に知りたい人
- 中国とアメリカの今後50年間を知りたい人
- シンガポールの経済政策・教育政策の秘訣を知りたい人
耳学習で土日に簡単読破 世界標準のビジネス・投資知識を短時間で習得 おすすめ書籍6選!
本書は目次が重要
目次は以下の通り
第1章 中国の未来 ※習近平の分析が凄い
第2章 アメリカの未来
第3章 米中関係の未来
第4章 インドの未来
第5章 イスラム原理主義の未来
第6章 国家の経済成長の未来
第7章 地政学とグローバル化の未来
第8章 民主主義の未来
第9章 リー・クアンユーの考え方
第10章 むすび
リー氏が高難易度の質問にひたすら答え続ける
リー・クワンユーは、戦後から半世紀に渡ってシンガポールの建国の父で実質的な国家元首として、外交政策に携わってきた。本書の冒頭では、彼個人への謝辞としてバラック・オバマ、クリントン夫妻、サッチャーをはじめとした歴代イギリス首相が文章を寄せている。
本書では、そんな世界の外交政策の中心に居続けた彼が、世界に関するあらゆる高難易度で回答困難な質問に、ひたすら答え続けるという、わかりやすくて読みやすいが、作る方にはかなり過酷な内容となっている。
アメリカ・中国・インドの突出したインタビュー
あくまで私が読んだ感想になってしまうが、中でも驚いたのは、アメリカとインドへの考察であった。本書が書かれた時点では、2015年とトランプ大統領の選出前だが、アメリカへの危機感をある程度的中している。詳しい内容には触れないが、正直、2016年から2020年のアメリカの動向というのはもっと読みにくかったはずである。
また、インドの人口増加と経済発展への言及の精度が凄い。2019年ごろにインドは中国の人口上回るだろうという前提で話を進めているが、インドの産業的な強みと弱みは私から考えても的中しているように思える。カースト制度の批判もあるが、インドの政財界のトップがどのようにカースト制度に苦しみつつ依存してしまっているかを、見抜き、しかも簡単に説明してしまっている。
中国はスター企業・第一人者が不在でもアメリカを超えると予測
通常、世界覇権国は「象徴的な企業・組織」「象徴的な人物」に導かれて、世界覇権国になることが多い。というか、それがほとんどである。しかし、クワンユー氏は「中国は制度上、民主主義になることはなく、突貫的に法律だけ整備して、スター不在で覇権国になる」と予測している。
当初、私は必ず中国からスターが登場すると思っていた。しかしそうなっていない。
それでも、中国はアメリカを抜き去りそうである。
この辺の、クワンユー氏の中国民族の分析は恐ろしいくらい正確にあたっていると感じる。
中国は「絶対、民主化しない、民主化すると崩壊する国である」
本書ではイランの核問題、パキスタン、そして日本にも触れているが、最後に書いておきたいのはやはり中国のことである。クワンユー氏は「中国は民主化すると崩壊する」すると書いた。
驚くべき予測である。今のところほとんどの専門家は「民主化する」と考えている。
そして、この予測は、かなり慎重に論理立てて書かれている。
気になる人はぜひ、本書を手に取っていただきたい。
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