関東・関西で危ないと言われる手法でのしあがった地方若年層不動産投資家のリーダー『高卒製造業のワタシが31歳で家賃年収1750万円になった方法』ふんどし王子

投資

著者紹介

1985年富山県生まれ。

ブログなどで通称『ふんどし王子』として活躍中の30代・元工場勤務サラリーマン。卒業後、地元の大手自動車メーカー系列の企業に就職。2009年、24歳の時に100万円を元手に2,500万円の2世帯住宅を新築し、不動産投資を開始。その後も精力的に、富山で不動産投資をしている。

本書を書いた頃は、現役の工場勤務サラリーマンだったが、現在は不動産投資とセミナー活動で生計を立てているようである。

目次

  • 第1章 高卒製造業の私が24歳で300万円を貯めて、31歳で家賃年収1750万円になるまで!
  • 第2章 無借金で手元の資金を増やす方法
  • 第3章 元手100万円!“ふんどし王子”印の「不動産投資」のはじめ方
  • 第4章 「融資」を使って一棟物で規模を拡大する
  • 第5章 「満室経営」で家賃収入を得つつ、「売却益」も狙う
  • 第6章 2棟目、3棟目!どんどん「収入を増やす」ための「物件購入・売却」術
  • 第7章 低属性から始めて、お金持ちへの階段を上る「大家さん仲間たち」紹介!

はじめに

2016年ごろに地方の下等労働者の間で、不動産投資ブームに火がつく

本書を買って読んだのは、2016年ごろである。私が不動産投資を初めて間もない頃で、その頃は民泊などで地方でも不動産投資家が恩恵を受けていた。その中で到底、本来不動産投資ができないような社会的下層に位置する若者たちが、率先して不動産投資に身を投じるブームが起きた。

その先駆けが、ふんどし王子だと言える。

ブームの直後に、かぼちゃの馬車事件、サブリースなどの諸問題が立て続けに起きる

ふんどし王子のブーム(地方若年層の不動産投資参入)の後に、かぼちゃの馬車事件、サブリース問題やスルガスキームなどが発生した。

また、ふんどし王子ブームの裏支さえとなっていた民泊もコロナショックによって、あっという間に崩壊したのも記憶に新しい。

そんな中で、この本に載っているふんどし王子やその仲間たちをググってみたが、彼らは普通に生き残っていた。クラブジャイアンの面々や関東圏の大家団体とはことなる生き残り方をしているように見えた。私の知る限り、特に関東の不動産投資家は結構な割合で撤退している。

本記事では、その辺を踏まえ、この本がどういう意味でよかったのかをみていきたい。

『高卒製造業のワタシが31歳で家賃年収1750万円になった方法』の特徴

  • 関西・関東よりも若年不動産投資家を生み出すのに都合良い北陸エリアの内情
  • 物件購入後も政策金融公庫の融資がひけるなど「裏技」と「悪戦苦闘思考」を掲載
  • 賃貸型住宅の手法が克明に書かれている

本書は重版に重版を重ね、2022年現在でも新刊が発行されている。

これは非常に珍しいことで、通常は増刷はしないため新品の購入ができなくなり、中古本の販売のみとなる。有用な本であれば、そこから中古が値上がりし、なければ1円本になっていく。

だが、本書は新品もありながら中古書籍の値崩れが起きていない。

地方不動産投資におけるメンター事情

本作は、当時、北陸新幹線特需を受けつつ、新興不動産投資家バブルの聖地である富山でのストーリーだ。それは状況的に、関西や関東と全く違うと言える。

また、ふんどし王子は関係を持った加藤ひろゆき(北海道ボロ戸建)吉川瑛一(北陸アパート経営)という2人の強力なメンターを得たのも運が良かったと思う。この二人は、若手を丁寧に育てることに長けており、いずれも詐欺師的な色合いが濃い関西・関東の不動産投資家とは異なる。

不動産投資家としての最下層:ふんどし王子の立ち位置

ふんどし王子の半生をその生い立ちから描くため、非常に読みやすく、感情移入ができる側面がありつつ、奧さんとの関係や友人、親族との対話が書かれています。

自費出版的な不動産投資本(本書を含む)は、この手の生い立ちを書く場合が多いが、ふんどし王子の場合は、最下層を標榜するために、詳細な描写が多い。例えば、工場勤務の内容などがそうだ。

危険と言われる駐車場・賃貸併用住宅からスタート

早い段階から彼にはメンターがいたので、失敗に次ぐ失敗をリカバリーする手法が多く書かれている。

一番初めに買った駅前の土地は、駐車場でもうけるために買ったのですが、全然車の需要がなく、地獄を見る羽目に陥る。当然だ、駅前は車の需要はどんなど田舎でもない。
ここで、大きな失敗をしたふんどし王子は、メンターよりその土地に入居のつきづらい一階はふんどし夫婦の新居。そして、二階は賃貸と形で新築アパートを建設することを提案される

賃貸併用住宅は、関東・関西圏ではトラブルが多く、そのせいもあって融資がつきにくい現状があるが、富山ではこれがのちのち功を奏することになった。また、ふんどし王子の性格が、賃貸併用住宅にマッチしており、普通は反対する嫁さんが賛同したのももしかしたら風土としてあったのかもしれない。

敵が少なければ、市場がボロボロでも望みがある

大前提として、富山は「地主しか投資物件をたてない」土地柄であることが本書を読むとわかる。

そのため、不動産に関連した課題は都市圏と全く異なる。

例えば、本書で書かれているのは、学会やコンサートがあるとホテルの需給が追いつかないなど、開発の進んでいない地方都市ならではの問題が描写されている。他にも、首都圏や大都市近郊と大きく違い、新築のニーズが多く、またこのエリアでは築古物件といっても20年前後と、銀行融資アドバンテージがあることが伺える。

これらの描写は、2016年当時、多くの若年層の地方不動産投資家に勇気を与えた。なぜなら、当時出版されている本のほとんどは関西・関東の不動産投資家によるものばかりだったからで、全く違う文化背景が地方に眠っていることを、新規参入者は知る術を持たなかったのだ。

悪戦苦闘する楽しさを伝えた本

また、他の本ではあまり表に出されていない、「他の不動産本のアイディア」の出典が豊富で、一冊を読むことで数十冊の本を読む効果もあるのが面白い。
それだけではなく、他の本に書かれている手法の「裏付け」のとりかたなども記載されており、ちょっと今までにないスタイルの書籍だったことを私も思い出した。

基本的にこの本は、予定が全て外れ、予想外のことが起きる中で、悪戦苦闘するのが不動産投資、という考え方で書かれている。これは若い投資家にしか書けない本だったと改めて感じた。

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