
『正直不動産』(11)の内容
- 狭小住宅
- 負動産(ガーラ湯沢リゾートマンション)
- 担ボ物件
- 持ち回り契約
- 契約不適合責任
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綺麗事とご都合主義が増え、内容も陳腐に
本巻で11巻目を迎える『正直不動産』は、素人の不動産投資ブームからのかぼちゃの馬車事件、スルガ銀行不正融資事件、タテル(:Tateru 現 Robot Home)事件、レオパレス事件といった不動産投資の不祥事が連発した中で誕生した、生まれるべきして生まれた待望の暴露マンガであった。
ところが、銀行の融資が閉まり、一般人による不動産投資の波が引いてコロナショックになったことで、不動産投資自体のブームは償却。漫画に対する世間の興味も急激に萎んでいる。
それに合わせてか、本作もだいぶストーリーが陳腐化し、内容も薄弱になってしまった。ガーラ湯沢の売れない不動産の管理費がどんどん老朽化で上昇し、物件値段が1万円というバカ安に対して管理費修繕積立金が年100万円なってしまった『負動産』の回では、主人公の永瀬が全く解決策にならない絵空事をスピーチしただけで課長代理に昇進してしまうと言う絵空事には、笑ってしまった。
急激に読者が離れ、人気が低迷している『正直不動産』シリーズ
しかし、この漫画シリーズが社会、少なくとも不動産業界や私のような不動産投資家に与えたインパクトは大きく、それは「善」の側面が強かった。ただ、それがたった3年弱で終わりそうな気配がしている。『正直不動産』(11)のラストでは新展開を予感させる苦し紛れの方針転換が打ち出された。この部分に少しだけ、光を当てて考えてみたい。
主人公:永瀬財地が昇進。前者で正直不動産を目指すも、永瀬の過去の悪行が暴露されるという展開を今後進めるらしい。これはアリか?ナシか?
主人公の長瀬が、ついに人事を司るポジションに任命され、社員教育を任される。彼は当然、そこで、「正直であれ」という方針で、悪が常識の不動産業界に革命を任されると言う展開だ。
新入社員教育を永瀬が担当し、新人に過去の悪事をバラされ、信用を失い疑心暗鬼に思われるような展開で(11)は終わる。彼には今後「挽回する」と言うテーマが与えられるらしい。
これは、私的にはナシだと思う。面白くなる要素が感じられない。
誤った方針転換:主人公の過去の悪事の話ばかりはできない
私は、曲がりなりにも東京藝術大学で映像学(物語論)の修士を持っている。人より多くの、物語を見て、研究を行ってきた。その経験で言わせてもらうとこの展開は上手くいかないと思う。内容が先細りするからだ。流動的な強敵がいなければ、少年誌は上手くいかないし、世間に情報が浸透しない。そこで過去に対して方針転換をすれば、反復の地獄が待っている。きっと、あれもできない、これもできない、そういう企画会議になっているのではないかと想像する。
ただし、不動産の関連事件・詐欺は今後も起きる。
しかし、本作の特徴は「タイムリー」さだと思う。
過去の名作巻である(3)や(5)(6)は、実社会で起きたタイムリーな出来事をうまく取り入れてきた。コロナショック後の現在、たまたま不動産のトラブルは起きていないだけで、それゆえ、一時的なネタ切れになったと見ることもできる。また、凶悪事件が起きれば、本作は蘇るかもしれない。
というわけで、私は引き続き、本書を読んでいこうかと思う。
ぜひ、この記事で興味を持った人は『正直不動産』の人気化に貢献した(3)(5)(6)を読むことをお勧めする。私はあくまで、この漫画が復活してくれることを祈っている。