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目次
- CHAPTER.1
「WHY!? お金を増やしたいのに何もしないの?」 - CHAPTER.2
「お金を増やすための最初の第一歩は支出を減らす」 - CHAPTER.3
「ジェイソン流、お金を増やす10の方法」 - CHAPTER.4
「資産形成は自分の人生を手に入れる手段」 - <コラム>
「良い借金」と「悪い借金」 など
本書の私の評価:これ以上気楽読める投資本はない
私は株式投資家としては、まだまだ初心者に毛の生えた程度で、せいぜい中級か中の下あたりだと思う。ただどう考えても初心者向けの本であるのは分かりつつ、本書を手に取ってみた。
それだけ売れていたというのもある。
いかに、本書の要点をまとめて書いてみようと思う。
- VTI(全米のほぼ全部の企業に投資)で妥協できる人向け
- 忙しいサラリーマン向け(株式ニュースを見る時間がない)
- 極度の節約でも楽しめる(マストではない)
- 決算書が読めない
- 会計に興味がない
- 極度の不安症に最適
- 証券会社の操作に不安
- 為替でのドル転換などをしたくない
生活費の収支を全く考えてこなかった人に最適
同書籍の特徴は、節約の延長上に投資がある、という考えに立っている点だ。
この点は、おそらくリベ大の両学長と同じ観点で、いわゆる『投資』と『節約』の両輪で多くの対象をターゲットにできる。間口が広いのである。
解説している銘柄は『VTI』ほぼ一択
また、数字の嫌いな人間に向けても書かれており、その特色が、推奨銘柄が1択という極度のミニマリズムに存在している。ただしその1択の『VTI』自体が、4000社ほどの全米の優良企業をまとめた雑多で、非常に多くの側面を持つというものだ。
しかもこの投資信託VTIに投資をしているアメリカ人で長期投資に失敗している人はほぼゼロという優れものであり、気楽と安全を両立できる商品設計が魅力と言える。
VTIの補足説明

本書では掲載されていないVTIの補足を私の方でしておくと……
- 値動きはどちらかというと激しい(リスク度はまあまあだが回復力も世界最高クラス)
- 暴落も暴騰もする
- 分配金が年に1.3〜1.5%ほど出る
- 運用経費が全世界で最安
- 投資信託バージョンも多い(楽天VITやSBI・Vなど)
- 決算書を見る必要が皆無
- 持ち続けるのに、最初はメンタルが必要
買って持ってみると、思った以上に値動きが大きいのが特徴だ。
だが、思ったのと違う、という値動きには絶対ならない。
なぜなら、日々のアメリカの株式指標とほとんど同じ動きをするからだ。その辺は、厚切りジェイソン氏の本の中でも語られている。
また、リーマンショックやコロナショックでもきちんと暴落する。
その辺は上記のチャートを見てもらうとわかるだろう。だが、本書を読めば、それでもこの商品が世界で一番安全な部類に入る理由が、納得のいく形でわかると思う。
著者の分析(投資経験や思想メイン)
厚切りジェイソン(ジェイソン・デイヴィッド・ダニエルソン、1986〜)
アメリカ・ミシガン州出身。ミシガン州は、アメリカのラストベルトと呼ばれる低所得者白人の集中する代表地域。厚切りジェイソンは、熱狂的なトランプ支持者なのはその点も影響している。
17歳で飛び級でミシガン州立大学に入学後、イリノイ大学でエンジニア系の修士号を取得。
厚切りジェイソンとビジネス・投資の分析
厚切りジェイソンは、新卒でGE(ジェネラル・エレクトリック)に入社する。
当時のGEは、伝説の経営者であるジャック・ウェルチによって経営再生を測られた後であり、それゆえに日本に繋がりが深かった。というか、GEは、原理力製造を受け持った赤字だらけで血だらけのウェスティングハウスを東芝に強引に買い取らせる(東芝はこれで経営が傾く)など、GEの大量不採算部門を買わされたのは、一方的に日本企業だった。
ジャック・ウェルチは、1980年代に“リストラ”という言葉をブームにした、元祖整理解雇型の剛腕経営者と言われており、その後始末を大量に実務としてやらされた日本にゆかりが深い。
厚切り氏のものの考え方には、本書を読む限りこのウェルチの思想が見て取れる。それはもちろん、彼が新卒で入った企業の伝説的な経営者であったこともあるが、それ以上に、1980年以降生まれのアメリカ人には、彼の厳しさは、実に愛着のあるレベルのものとして浸透したのもあるだろう。

GE所属時代に旭化成に出向・日本人女性と結婚
今ではIT企業の取締役とお笑い芸人として有名な厚切りジェイソンだが、日本のタレント活動への入り方は、いわゆる外人タレントとしての日本のメディア参入はオーソドックスな形をとる。
そのオーソドックスな形とは、日本語事業に関わる形での来日と、日本女性との結婚である。
GEから出向した旭化成では、主に、ソフトウェアの日本語ローカライズ担当だった。
個人的に彼のポジションは、ダニエル・カールの後継的なものだと思っている。
日本での投資経験の多彩さが本書には隠れている
厚切りジェイソンは、滞在した総年数は不明だが、キャリアとしての日本との関わりは15年近く、妻も日本人ということを考えると、深いものだと言える。
また、本書では株式投資以外にも、米国株の個別株、日本の個別株、不動産投資、宝くじ・公営ギャンブル文化といった日本人の金銭への思想・アレルギー感に詳しく、特に日本での不動産投資の詳細情報を匂わせているのには驚きがあった。
そういう意味で、VTIの積立投資が日本人に最適であることを随分早期から見抜いていた可能性が高い。それゆえにVTI一本だけの本を書くという大胆なことができたのだろう。
高橋ダン・厚切りジェイソン比較で見えてくるもの
全くの偶然かもしれないが、2020年のコロナショック後を境に、厚切りジェイソンとほぼ同年である高橋ダンも投資系の外タレとして日本のメディアにデビューしている。
この二人は、同じ世代ではあるが、投資への思想が全く逆なのが興味深い。
最後にこの両者を見比べて、起きたいと思う。
厚切りジェイソンのスタンス
- アメリカの永遠の成長を前提にしている
- 投資は家族のために行うもの
- 投資に無駄な時間を割かない
- テクニカルを重視しない。むしろ信用していない
- 投資初心者のままでもよい
- 共和党保守の思想
高橋ダンのスタンス
- アメリカの成長を前提にしていない(インド・中国にシフトする)
- 投資は、金儲けと同時に、世界を知るために行う
- テクニカルが全てを物語る
- 最終的に投資初心者であってはいけない
- 民主党タカ派の思想
共和党(土着思考:厚切りジェイソン)・民主党(開拓思考:高橋ダン)
この二人の投資の思想は、このように全く逆だと言える。
その中で、最も二人の差異を語る参考になるのは、厚切りジェイソンが土着思考を持っているのに対し、高橋ダンは開拓思考を持っている点だと言える。
その中で、日本人に向いているのは土着思考の厚切りジェイソンであることは間違いない。だが、なぜか日本の中級以上の投資家には高橋ダンが受け入れられている。
しかしながら、高橋ダンはアンチの割合で言ったら厚切りジェイソンの比ではない。私のブログには多くの高橋ダンのアンチが訪れるから、その辺が私にはよくわかる。
つまり、好かれるが、決別されるのも高橋ダンの特徴だと言える。
投資を理解しない配偶者や子供に最適なジェイソン本
最後に、本書をどう扱うかについて書いておきたい。
投資というのは、妻や子供に日本ではなかなか理解されない。
本書を書いた厚切りジェイソンはそのことを熟知しており、この本を書いている。この本が理解できない人は、頭がおかしい、というレベルの優しい本が必要で、著者自身に興味もあって読ませるような仕掛けが、今の所、厚切りジェイソン氏の知名度で成立している。
そういう意味で、周辺への理解のために、本書は電子ではなく書籍として手元に置いて、いつでも見せるようにしておくのがおすすめだと言える。
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