「言いなり」の仕組みを簡単解説『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』ロバート・B・チャルディーニ 要約

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著者紹介

著者のチャルディーニ

ロバート・ベノ・チャルディーニは、アリゾナ州立大学の心理学およびマーケティング学部の名誉教授であり、スタンフォード大学およびカリフォルニア大学サンタクルーズ校のマーケティング、ビジネス、心理学の客員教授であった。

「承諾誘導」を始めて世に出した書籍

本書は、人間が意思表示したわけでもないのに自然とある指示に従ってしまう『承諾誘導(ようは言いなり)』という行動について書かれた本である。ようは「言いなり」について、心理学的なアプローチを行なって得られた結果を書いたものだ。

私としては、本書と『PRE-SUASION :影響力と説得のための革命的瞬間』を必ずセットで読むべきだと考えている。理由はこちらのブログ記事でも語っているが、本書だけでは人間心理を操るには足りないからである。

この「言いなり」の「魔術」を使うには、続編の『PRE-SUASION :影響力と説得のための革命的瞬間』が必要である。

洗脳の一つの形である「承諾誘導」

本書で言及されている「承諾誘導」は、例えば「いいことをしてもらったら、お返しをしなければならない」といった人間社会で常識と考えられ、『体が勝手に反応してしまう』ようなこと(返報性)を使って、「他人のある目的のために犠牲や代償を支払ってしまうこと」である。

つまり、これは世間でいう洗脳の一つである。

本書は、それらの現象のさまざまなバリエーションについての例示と解説がなされている。

「洗脳」を「道徳」ではなく「金銭・利益」で考える

「承諾誘導」がどれだけ驚くべき恐ろしいことであるかを、本書は経済性を軸に、解説しているところが非常に画期的である。

それによって何が得られるのか?

それは常識の根底的なものは、金銭を稼ごうとする人間たちによって巧みに構築されたものであるということである。つまりは、半ば『陰謀論の暴露』的な大きな枠であり、またそれは、営業・広告といった生活で無意識でお互いに騙しあっている人間社会の素直な成り立ちである。

本書では「承諾誘導」の「防御」までしか対応できない

これほどに画期的な本である。内容も豊富である。

しかし、本書は単なる「初めの一歩」であり、実際にこれらの力を行使(「承諾誘導」を意識的に使う)するには、足りない。著者のチャルディーニは、偉大な発見はしたものの、処方箋を描くまでには至っていないのである。それは本人にもよくわかっているように思われる。

人間行動の心理を「暗くしたくない」「ユーモアを持って伝えたい」

例えば、ある学者が重要な知識を研究で書くとして、一般書籍として出版するとき、「どこまで書くか」という問題にぶち当たる。日本ではそのわかりやすい例としては『完全自殺マニュアル』などがわかりやすいと思う。『完全自殺マニュアル』を読んだ人は、わかると思うが、同書は自殺の手法を語りつつ、『自殺が一人でやるにはいかに難しく、成就しにくいか』を「太田出版(ビートたけしの出版社)のならではの独自のユーモア」で書かれている。

「影響力の武器」は、前半に論理的なテキストを少し書いて、内容が深まっていくにつれ、『例示を増やす』という手法を取る。

学者が本当に伝えたい事実を世に出せるまでは時間がかかる

チャルディーニは、1945年生まれで本書を1984年に出版している。

学者で39歳という年齢は、若造でなんの権限もない。というか、若すぎて自分を守るすべがない。

つまり、わかっていても大きなことを書けないのである。

それに対し、続編の『PRE-SUASION :影響力と説得のための革命的瞬間』は、2014年に出版されており、学者であれば年金生活も確定している70歳代近辺ということになる。これはほんとによくあることだが、『学者が本心で言いたいこと・刺激が強い研究結果』を発表するのは、学者生活の晩年である。その点を踏まえて、本書は読み終え、次に行って欲しいと思う。

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