騙されてもやりたいかどうか。仲介業者と不動産投資家を疑惑の目で見る本『「14人」の達人に学ぶ 不動産投資成功の秘訣』新川義忠

投資

著者紹介

新川義忠

株式会社クリスティ/代表取締役・富士企画株式会社/取締役営業部長
インテリアの専門学校を卒業後、インテリア会社勤務。その後、大宮を中心とした不動産会社に入社し、2012年に独立し、非営業スタイルの富士企画を立ち上げる。

本書の内容

  • 不動産仲介業者と長く付き合う、ということがわかる
  • 世間の悪評に仲介業者が自ら答える
  • 仲介業者は信用できない、を仲介業者ととことん考える

嘘と詐欺のまかり通っている業界で

昨年、かなりチャレンジングな番組が不動産投資サイト「楽待」にて公開された。

本書の著者である新川氏が、5つの物件を持ち込み、6名の有名不動産投資家に提示して公開買付けをするという試みだ。
1日目はスタジオ収録で5つの物件を2つに絞る

2日目は実際に物件を見に行くというもの

無事に公開買付けが入ったものは、モザイク無しで動画放送されるという、不動産投資家と仲介業者のインサイドワークを、タブーを無視して公開。と同時に、これは相当な仲介業者の力がないとできないことだとわかる。

不動産投資の『正直さ』とは何か

で、肝心の本書の話題に戻る。

同書は「クリスティ」「富士企画」といういわゆる「正直不動産」スタイルで、反響営業のみを行う「売らない営業」を確立した、新川氏の著作である。

本書のテーマは、彼と有名大家の馴れ初めと、その長期的な共同作業の実態の公表である。

中でも、楽待の大御所不動産投資家、中島亮氏とのエピソードが多い。

中島亮氏

もちろん、彼も不動産業者であるので、全部を全部信じてはいけないが、それでもあえて彼が本書で主張している新川式の正直なスタンス例を羅列してみる。

  • 融資は購入が確定的でも銀行に迷惑が掛かりそうならキャンセルするべき
  • 仲介業者と親しくなければ「瑕疵担保保証」などの交渉は難航する
  • 仲介業者が投資家の性格が不動産業に向いてなければ、撤退を促すべき

これらは14人の投資家たちとの会話で、語られるいわゆる新川式の仲介特性だと言える。このようなことを書籍にして世に公表できるような不動産仲介業者は、確かにほとんどない。
だが、こういうものは、常識化もし安く、またこれを逆手にとって詐欺的なスキームもまた生み出されるのが、日本の不動産業界の特徴でもある。

「正直さ」は敷居を高め、利益率を上げることを実践した、が。。。

最近、新川氏の「富士企画」は私の周辺の不動産投資家にもかなり評判が良い。しかしながら権威性が増してきているので、同社は「気に入った顧客しか相手にしない」という感じなっている。連絡は取りづらいし、物件紹介も多くはない。しかも小さな規模の会社なので、付き合いづらいというのが私の周囲の本音でもある。

そして、私の懸念としては、今後、この「新川式『正直不動産』仲介」のやり方で、詐欺業者も続出するのではないかということである。現に、ちらほらそのような噂を聞く。
現在、市況が悪いので、不動産業者も立ち位置を変化させて顧客に近づかなければならない。新川氏の存在は、そういう意味では、一つの基準となるだろう。だが、注意は必要だ。
よって、本書をストレートに読むというよりは、これからの仲介業者のマインドを読み解くという意味で、「半分面白がりながら」読むことをオススメする。

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