やけにポジティブな僧侶の説法集。圧縮と過剰集中を課された若い世代に向けて書かれた。ただ、やらせレビューの疑惑も。『モンク思考―自分に集中する技術』ジェイ・シェティ

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著者紹介

ジェイ・シェティ(1987〜)

インド系イギリス人。元ヒンドゥー教の僧侶であり、インド系のライフコーチ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙ベストセラーリスト第1位作家。講演家、ポッドキャスターでもある。2019年、広告業界誌『アドウィーク』により「若きインフルエンサー」に選出され、「スピリチュアル・フォースの輝き」として同誌の表紙を飾った。2017年にはメディアにおける絶大な影響力が認められ、ビジネス誌『フォーブス』「世界を変える30歳未満の30人」の1人に選出される。

目次

はじめに

パート1 手放す
 第1章 アイデンティティー――自分だと思っているもの 
 第2章 ネガティビティー――邪悪な王様は空腹を満たせない
 第3章 恐怖――「この世」という名のホテルへようこそ 
 第4章 意図――金(ゴールド)に目をくらませるな 

 呼吸瞑想

パート2 成長する
 第5章 目的――サソリの性分
 第6章 ルーティン――場所のエネルギー、時間の記憶 
 第7章 心(マインド)――御者のジレンマ
 第8章 エゴ――キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

 視覚化瞑想

パート3 与える
 第9章 感謝――世界最強の薬
 第10章 人間関係――人間観察
 第11章 奉仕――他者のために木を植える

 チャンティング瞑想

まとめ

概要(ブログ主のまとめ)

テーマは、捨てることで成長する である。

この本は、ある意味1980年代以降のY世代の象徴である思想がてんこ盛りだ。

捨てる、逃げる、回避する、という哲学に終始し、黙っていてもネット技術によって、集中と圧縮を過剰に求められる現代の世代のための、救いの書だと言っていい。

今の若い世代から見たら、1990年代の残業万歳社員でさえ、農村の牛レベル以下なのだ。実際そんなことは考えていないかもしれないが、本書を読んで私はそう思うようになった。

本書のスタイル

本書は、やけにポジティブな仏教の僧侶の説法のような形を取る。

日本の説法書は、大体はネガティブで、ポジティブでもしっとりしている。

わざと難しく考えれば、戦敗国としての影響とオウム真理教や創価学会などの影響を受けているからどう。当然、積極的に未来を語れない。

ただ、そういうものに慣れていると、ネガティブが深みのあるものに見えたり、こういうポジティブな書籍がアホっぽく見える。大半の日本人には、かなりアホっぽく見えるのは待ちがいない。

だが、本書は部数もだいぶ出ており、著者の世界的な評価は悪くない。そこから逆算して考えることをしてみていいと思う。というか、そうするしかない。

読んでいくと、著者はそれなりに本格的に仏教を学んではいる気配がある

戦後、仏教はインド人や日本人から白人社会にメディケーション(瞑想)を通して、伝達され、ヒッピー文化と合間って流行したりしたことがあった。

国内では葬式仏教のイメージしかないが、海外で頒布されている仏教は、本書のように、宗教哲学を排除して、生活様式や生活の考え方だけを抽出したいわゆる「禅」(ポリシー)である。

著者は、仏教のこのような側面を、著者は若者層に向けた知識や思考法としてまとめた。

ちゃんとした知識を持っているようで、難しい用語も後半になるとそれなりに出てくる。

彼の本を読む限り、仏教は、キリスト教やイスラム教、ユダヤ教よりも、IT化やAIの隆盛に適していると感じる。ふと、インド人がプログラムができるのはそういうことか……?と思うが、本書を読むくらいではそんなことはわからない。

ただ、本書はPCやインターネットの文化を語るように、集合知を神として、彼は多くの仏教教条を語っていく。その中で、どうやって自分の周りの不要なものを削除していくのかを諭していく。

その流れは、実に自然でわかりやすい。

ちょっと変わった良書なのかもしれない、というところで本書は終わる。

Q:どんな人が読むべきか?

A:30歳以下の人。10代とかにいいかもしれない。

たぶん、40歳以上の日本人が本書を読むとだいぶアホっぽく見える。だが、こういう青年の主張のようなポジティブな書籍は、いつの時代も必要だと思う。

ただ、何度も言うがかなりアホっぽい。

これは流石に日本人の若者でも引っかかるかもしれない

Q:アホっぽいけど売れたのはなぜか?

A:本当に売れたとしたら、書き方、話し方がいいのだと思う。

また、今のネット社会で苦しむ若者の、激しい効率化によって、一生、自分の記録を更新し続けなければいけないような生き方を要求されており、それをフォローしているというのもあるだろう。

これは、Y世代以降、初めて登場した悩み・苦しみだと思う。

だが、どうしてもそんなに大ヒットする書籍に見えないのが私の感想だ。

Q:モンクとしての、仏教的側面はどのくらいの深さか?

A:前半はあまり仏教の話はしていないが、後半につれ、本格的になってくる。3年間とは言え、さすがモンクとして修行しただけあると、思える部分は決して少なくない。また、著者のルーツがインド系の家系にあるのも無関係ではないだろう。

→本のジャケットの写真はインドっぽくない写真をかなり過激に加工していることが後でわかる。著者の名前を画像検索すると、モロインド系のぽっちゃりした人だとわかる。みなさんもやってみてほしい。驚くと思う。

ただ、それでもいささか過剰に評価されているような気もする。日本人は、欧米に比べて生まれながらに圧倒的に仏教の下地がある。そういうのは、騙せない甘さがあるかもしれない。

Q:本当におすすめなんですか?

A:実はわからない。

正直、レビュー数は少ないし、購入していない高評価が目立つ。

出版社のやらせレビューの可能性も今の段階だとあり得る。

ただ、心が弱っていたらこういう本を読みたいという人がいてもおかしくない。普段本を読み慣れている人にはあまり勧める気にはならないが、そうではない人は読んでみてもいいかもしれない。

なにせ、最初から本書はアマゾンオーディブルが存在している。版元やAmazonが売れると最初から予想している本なんだと思うし、世界的なベストセラーというのは間違いないのだろう。

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