マクロ投資家で逆張り投資家のパイオニア。否定的に読んで、検証してみる『お金の流れで読む 日本と世界の未来』ジム・ロジャーズ

オーディオブック

著者紹介

ジム・ロジャーズ(1942〜)。ジョージ・ソロス、ビル・グロースなどと並んで世界的な投資家。クオンタムファンド設立者。イェール大学卒、オックスフォード大学院で修士を取得。現在はシンガポール在住。

表紙のトランプ当選・リーマンショックの予言は後付け、嘘つき

まず、表紙のキャッチだが疑いが高い。トランプ当選に関しては、日本語では著者の予言はいくらググっても見つからない、どころかトランプ当選後にあったトランプ相場では踏み上げにあって大損をこいているという記事すらあった(発信元・ウォール・ストリートジャーナル)。完全なる嘘つきである。

北朝鮮は最高の投資先・世界一豊かな国になる

本書の中で、著者は北朝鮮が将来、最も有望な投資先になると語っている。これに関しては、今はまだ判断できない。個人的には可能性はあると思う。が、あくまで中国の中継ぎエリアとしての北朝鮮ではないかと思う。昔で言う、マネーロンダリングとしてのマカオのような感じである。
ジム・ロジャーズは、また、北朝鮮は韓国と併合して、アジア最大級の先進国として発展を遂げると言っているが、一瞬、当たりそうな時期はあったものの、現在はその予想はハズレだ。

ドルが上昇し続ける・ユーロは崩壊

2019年夏に本書が書かれた頃、ドルは109〜110円でコロナショックを挟んで現在は110円前後だ。上昇を続ける、というのは外れている感じがする。だが、まだなんとも言えない。少なくとも多くの経済評論家がドル安、円高になると言っていたのよりはマシである。

また、ユーロの崩壊はイギリスの離脱に伴う予測だろうが、今のところその兆候はない。イギリスがまだ離脱してから日が経っていないのもある。この辺は、今後を見守りたい。なにせ、著者はトルコリラの崩壊やアジア通貨危機の予言は的中させており、通貨の先行きは明るいので、当たる可能性はある。

中国の覇権はまだ先

以前、シンガポール建国者のリー・クワンユーについての記事でも触れたが、ジム・ロジャーズも中国はアメリカから中国が積極的には世界覇権を取りに行かないと考えている。しかし、彼の頭の中は、既に中国が経済覇権を握っているかのような書き方が目立つ。この辺も、まあ、そんなものだろうかという感じで、今後様子見である。

告白:東日本大震災で日本株を大量に買ってぼろ儲け

私が、本書で一番驚いたのは、東日本大震災による株価暴落で、著者が大量の日本株を購入したと告白した部分である。あの時、確かに日本の危機的状態とは無関係に、急激な円高が進んだ。私はこの箇所を読んだ時、初めて、この時、ああ、と思った。
日本はまだ2010年代は工業国としての信用はあった。だから、世界の金持ちたちは、復興がどうのこうのというよりは、東日本大震災の暴落は『不確定予想による売り』で『長期的には断然買い』と判断したのだ。私が、コロナ暴落でアメリカの株を600万円分爆買いして200万以上の爆益を一瞬で出したのと全く同じ発想だ。間違っていなかったと思うと同時に、金持ちはえげつない、と思った。

ロシアは株を買ってはいけない・債券は最高に良い

私は何も著者を馬鹿にしたくてこのような記事を買いているわけではない。著者をある側面では、信用しているし、尊敬している。彼は大金持ちなのだ。大きな意味では当たりまくっているのだ。

そんな、彼の特徴が現れたと感じたのは、ロシアに関しての記述である。
著者は、ロシアについての投資方針について聞かれると、株は市場が整備されておらず、政治的にもおかしなところが多いので買うべきではない、と言いつつも、世界が危機的状況になると、必ず、農業と資源で強みを見せるので、債券の投資先としてはベストだと言った。ロシアの債券は、現在7パーセントの利回りだ。農業と資源の裏付けもあるので、破綻リスクも低い。さすがだと思った。

証券口座が開きにくい国は、ぼろ儲けしやすい

また、面白いと思った記述は、外国人が証券口座を開設しにくい国は、証券市場がある程度法整備されていることが前提だが、強烈に買いであると語った。
その例として、本書ではいくつかの国での著者の例を出している。これは、意外だった。証券口座が開設しにくいために、結局、その国に直で行って、さまざまなめんどくさい手続きをすることにはなるが、それらの国で設立したファンドはいずれも40倍以上の利益を叩き出しているらしい。
さすが、ユダヤ人だと思った・

ビットコインはバブル。ETFは暴落しやすく危険

最後に、現代的な金融商品の代表として、ビットコインとETFについて述べている。
ビットコインは、資産としての裏付けがなく、利回りに当たるものが内在していないので、いずれ全てはゴミになるとまで書いている。この点は私も同意しており、世界的に、今のところこっちにビットコインは流れていっているような気がする。が、まだわからない。

また、意外だったのはETF(個別株詰め合わせパック)に関しての記述だ。
著者はETFに入っている銘柄は避けるべきだということを言っている。
理由は、ETFが売られる時、全然入り理由がない個別銘柄も暴落する危険性があり、また、個別銘柄が引き起こす、気まぐれな暴落も引き受けてしまうことが多いからだと語った。
これに関しては、私はおかしいと思う。
確かに、近年、セクター売りという現象がある。
例えば、銀行株に危険があるので金融セクターのETFが売られると、一緒にパッキングされているノンバンクや不動産株も暴落する、という現象が現実に起きているのだ。ただ、これは、単純に業績と無関係な下げなので、ほっとけば元に戻る。私のような個人投資家にとっては、これは、単なる美味しい買い時である。なんで、そんなことを著者が言っているのかわからない。
以上である。
参考になるところも、ならないところもある本だ。
ただ、彼のようにリスクを取って、予想ばかり書いてくれる人も珍しい。
いくつかは当たりそうな気もするし、事前に読んでおけば、いざというチャンスの兆候を見出した時に、乗りやすいメンタルを獲得できる。アマゾンでは、著者の性格を揶揄するレビューが多く、非常に賛否の別れる書籍だが、おそらく、結果を出すトレーダーは必ず彼の本を読んでいるのではないかという感じがした。なぜなら、彼は単なる予想やではなく、その予想を実現する、巨大金融資本サイドの人間でもあるからだ。彼の予想は、彼がそうしたいという市場の流れでもあると思う。
こっそり儲ける手立てを持っておきたい人には、おすすめである。

この本は、読み放題にも含まれます。初月無料キャンペーン実施中

タイトルとURLをコピーしました