寓話で処理されてきた未来が70%の確率で訪れる。悲劇を現実にしないためのレッスン『ホモ・デウス :テクノロジーとサピエンスの未来』(上下)ユヴァル・ノア・ハラリ

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著者紹介

ユヴァル・ノア・ハラリ(1976年〜)

イスラエルの歴史学者。ヘブライ大学歴史学部の終身雇用教授。世界的ベストセラー『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』、『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』の著者。著書では自由意志、意識、知能について検証している。離婚歴があり、ゲイを公言している。

目次

【上巻目次】

  • 第1章 人類が新たに取り組むべきこと
    生物学的貧困線/見えない大軍団/ジャングルの法則を打破する/死の末日/幸福に対する権利/地球という惑星の神々/誰かブレーキを踏んでもらえませんか?/知識のパラドックス/芝生小史/第一幕の銃
  • 第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する
  • 第2章 人新世
    ヘビの子供たち/祖先の欲求/生き物はアルゴリズム/農耕の取り決め/五〇〇年の孤独
  • 第3章 人間の輝き
    チャールズ・ダーウィンを怖がるのは誰か?/証券取引所には意識がない理由/生命の方程式/実験室のラットたちの憂鬱な生活/自己意識のあるチンパンジー/賢い馬/革命万歳!/セックスとバイオレンスを超えて/意味のウェブ/夢と虚構が支配する世界
  • 第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
  • 第4章 物語の語り手
    紙の上に生きる/聖典/システムはうまくいくが……
  • 第5章 科学と宗教というおかしな夫婦
    病原菌と魔物/もしブッダに出会ったら/神を偽造する/聖なる教義/魔女狩り

【下巻目次】

  • 第6章 現代の契約
    銀行家はなぜチスイコウモリと違うのか?/ミラクルパイ/方舟シンドローム/激しい生存競争
  • 第7章 人間至上主義
    内面を見よ/黄色いレンガの道をたどる/戦争についての真実/人間至上主義の分裂/ベートーヴェンはチャック・ベリーよりも上か?/人間至上主義の宗教戦争/電気と遺伝学とイスラム過激派
  • 第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
  • 第8章 研究室の時限爆弾
    どの自己が私なのか?/人生の意味
  • 第9章 知能と意識の大いなる分離
    無用者階級/八七パーセントの確率/巫女から君主へ/不平等をアップグレードする
  • 第10章 意識の大海
    心のスペクトル/恐れの匂いがする/宇宙がぶら下がっている釘
  • 第11章 データ教
    権力はみな、どこへ行ったのか?/歴史を要約すれば/情報は自由になりたがっている/記録し、アップロードし、シェアしよう! /汝自身を知れ/データフローの中の小波

概要(ブログ主のまとめ)

本書は、大勢の人間を動かした宗教・独裁者・情報などを解説しながら、現代のAIやクラウドの誕生まで迫っていく。

表のテーマは“人間が他の動物よりも何が優れていたのか?”という問いだが、実際は全然違う。隠れたテーマについて、勘のいい人はかなり早い段階で気がつくだろう。

それは何か?

それは“神”というものを自分たちで、作っては壊し、作っては壊し、を繰り返しながら、ついに人間は、“クラウド”“人工知能”に到達してしまったという事実である。

よく考えたら、クラウドと人工知能(今はAI)は、確かにキリストブッタマホメットのようなものに近い。自らがとうに肉体を持たず、そしてまるで歳も取らず、文字だけの情報となり、その物語は何人もの手で書き換えられて更新された。

そして彼らの問いかける対象は不特定多数の膨大な人数だ。また、決まって対話が始まると、まるで1対1かのような親近感で迫り、その人の人生を左右しかねないような結末へと導けるくらいの強烈な引率力を持つ。

著者は言った。

PCが生まれた時に、実は多くの学者が“これまでの神が不要になる”だろうと。だが、それは私たちが民衆に伝えるべき情報でないから、ひとまず黙っておこう。

黙ることは正解だった。

だが、黙っていた間にチャンスを失った可能性も高い。

これが、本書『ホモ・デウス :テクノロジーとサピエンスの未来』(上下)の私なりのまとめというか、概要だ。

書き方は前作の『サピエンス全史』(上下巻)と同じ、ユーモアのある読みやすい文体で、エンタメ的に語られるが、内実はとても恐ろしい本だ。

Q:どんな人が読むべき本か?

A:いまだに宗教を信じている人。

宗教をいまだ信じている人、という言い方は、誤解を招くかもしれない。だが、あえていう。先祖でも亡き友人でもいい。そういうものを時々思い出しては、何か自分を元気付けるようなことをしている人も、アイドルや偉人を尊敬している人なども全部含まれる。

本書で警告されているものは、予言でも予想でもなく、現在進行形の地獄である。

万が一、他の新しい技術が現れたら、形態がちょっと変わるぐらいの意味での、誤差しかない。確率で言うと、70%以上だ。大学受験で言えばA判定だ。ほぼ間違いなく合格してしまう。

Q:どんなことが書かれているのか?

A:全て私たちが日々のニュースで目にしていることだ。

大体、聞いたことがあるはずだ。そうでなくても、聞いたらイメージしやすいことばかりだ。

ただ、今回もイスラエルのトップ知識人のハラリ氏だけの秘密情報みたいなものもないわけではない。その中で、人間の脳に電気信号を送り、恐怖を減らす実験の話がある。

その実験は軍事実験で、大勢の人間に一気に襲われると、どんな人間でも焦り、慌てる。それを、耳にかける小さな機器を装着するだけで、全て冷静に行動できるようになり、女性でも銃さえあれば、数十人を殺せるというものだ。

本書では、その実験台になったある女性の話が出てくる。

この逸話は、その殺人ぶりが怖いのではない。この“超人になった記憶”が、その後も彼女の心を快楽的に掴んで離さない、という万能感の恐ろしさであり、耳にかけるだけで微細な電気を脳に送り続ける機器として、既に現実に運用されているという事実の恐怖である。

このそしてその小さな機器に信号を送っているのは、遠くにいる、姿も見えない存在となりえる。もしかすると、場合によっては、それは人間ではなくなるかもしれない。

Q:著者は何を言いたいのか?

A:著者が本書を書いたということは、今からでも動きようによっては、ネガティブな将来ではなくせるという意識があるからだろう。

だが、そこには前作ほどのポジティブ感や、エンタメ要素はない。

本書は、前作にあった遠くから眺めるようなフカンした要素が少ない。

確かに、すぐ来るような未来ではないにしろ、書かれている内容(実験結果・発明品)は、もうすでに世の中に存在している。

著者にあるのは、せいぜい自分は40代後半で、有名人であるから、差し詰め悲劇の対象としては扱われないだろう、くらいの小さなゆとりで、ほぼ間違いなく、ここに書かれている悲惨な状況を、後の世代はダイレクトに経験するだろうという、自信に満ちた文章(考え)だ。

Q:GAFAM(グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブック、マイクロソフト)の存在を警告しているのか?

A:そういう側面はある。

GAFAMはバイデン政権によって、独占禁止法違反をはじめとした数々の法的手段で解体されると言われているが、本書を読む限り、バイデンはそんなことができないような感じがしてきた。

なぜなら相手は、未完成ではあるが、ほぼ“神”であることが本書を読むとわかるからだ。

そういう意味では、今はバイデンがそういう無理ゲーにチャレンジしてくれているわけで、私はバイデンが嫌いだが、まあ、頑張ってほしいと思うようになった。

Q:もう一度聞くが、本書はどのような人が読むべきか?

A:いまだに宗教信じている人全般だ。

自分を目覚めさせるために、多くの人は宗教を信じていると言われているが、その逆のことが今間違いなくこのようの中に起きている。その滑稽さに早く気がついて欲しいと思うような、なんというかいい本だと思う。前作より全然いいい。

こんな本を、陰謀論にせずに、こんな大衆的な感じのもので頒布できるのは著者の才能だと思う。

本書はオーディオブックで読めます(初回無料)

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