株価・債権の動きをコントロールすれば、その国の人間の動きまでコントロールできる『アニマルスピリット』ジョージ・アカロフ&ロバート・シラー

オーディオブック

著者紹介

ウィキペディアより参照・ジョージ・A・アカロフ

ジョージ・アーサー・アカロフ(1940年6月17日 – )

アメリカ合衆国の経済学者。カリフォルニア大学バークレー校経済学教授。2001年ノーベル経済学賞受賞。2006年アメリカ経済学会会長。レモン市場に関する研究で有名であり、情報の非対称性に関する研究でマイケル・スペンス、ジョセフ・スティグリッツ等と2001年ノーベル経済学賞を受賞した。妻は元FRBで4度の利上げを行い、バイデン政権では財務長官となったジャネット・イエレン。

ウィキペディアより引用・ロバート・シラー

ロバート・シラー(1946年3月29日 – )

デトロイト出身のアメリカ合衆国の経済学者。

イェール大学教授。専攻は金融経済学、行動経済学。ベストセラーの著書「根拠なき熱狂」 (Irrational Exuberance’) で知られる。2013年にノーベル経済学賞を受賞。

ITバブルの崩壊やサブプライム危機へ警鐘を鳴らしたことで知られる。

目次

第I部 アニマルスピリット
 第1章 安心さとその乗数
 第2章 公平さ
 第3章 腐敗と背信
 第4章 貨幣錯覚
 第5章 物語

第II部 八つの質問とその回答
 第6章 なぜ経済は不況に陥るのか?
 第7章 なぜ中央銀行は経済に対して
     (持つ場合には)力を持つのか?
 第8章 なぜ仕事の見つからない人がいるのか?
 第9章 なぜインフレと失業はトレードオフ関係にあるのか?
 第10章 なぜ未来のための貯蓄はこれほどいい加減なのか?
 第11章 なぜ金融価格と企業投資はこんなに変動が激しいのか?
 第12章 なぜ不動産価格には周期性があるのか?
 第13章 なぜ黒人には特殊な貧困があるのか?
 第14章 結論

概要(ブログ主の勝手なまとめ)

本書は2009年のリーマンショック後に発刊されて、話題となった書籍である。

アカロフとシラーは、これまでのミルトン・フリードマンが率いたシカゴ派に疑問を持っており、金融のマネーサプライと法整備で市場をコントロールできるという考えに、限界を感じていた。

初めて『アニマルスピリット』という言葉・理論を金融に使ったのは、ケインズ

この本では、ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』で初めて登場した『アニマルスピリット』という考え方を、補足し、掘り下げる形で構成されている。

ウィキペディア参照:イギリスの金融危機を救い、現代経済理論の基礎を作ったメイナード・ケインズ(1882〜1946)。彼自身、株取引と不動産取引で巨万の富を築いた優れた投資家で大富豪であった。

1890年代、1930年代、1990年代、2000年代の大不況を独自の視点で研究

『アニマルスピリット』の優れている点は、大不況だけに視点を置いていないところだ。つまり、暴落を引き起こす、根拠のない株の値上がりや、好景気を人間の欲望のしかもかなりレベルの低い「動物的な欲望」によって引き起こされたものだという考えを持っているところだ。

ターゲットを動物的な本能と定義してしまうのは、いかにも白人キリスト教的な考えだが、このアカロフとシラーの理論で、2020年のコロナショックを米国は短期で回避した。よって、2020年以降、この本の評価は、また高まっている。

市場の動物性を見極める方法:欲望と、そして強烈な平等意識

本書で語られるのは、そんな「動物的な欲望」の見つけ方を延々と述べている。その中で最も重要なのは『人間は公平であるべき』という“群れ本能感覚”が、一番厄介であることを証明したところだ。

例えば、市場の混乱は、銀行の取り付け騒ぎ、失業、ハイパーインフレなどがある。それらは、例えば「自分は他人と同じく扱われるべきだ」という心の動きで、大衆が動くことで起きる。

これは、個人の能力さやポジションなどを一切無視した強烈な「平等性」だと言えるのだ。

全体を描写しすぎたが、その後の行動経済学の効率性を急激に高めた名著

本書は、取り扱う内容が広すぎて、ピンポイントでの生かしどころはない。

カーネマンの『ファスト&スロー』のような行動経済学の使い勝手の良さはなく、総体を示しただけの無責任な書籍に思えるかもしれない。だが、本書の登場によって、バラバラになっていた経済学関連のサブジャンルが、大きな流れにまとめられるようになった。

その点では、現代経済学の欠かすことのできない名著だと言っていいと思う。

Q:どのような人が読むべきか?

A:金融ショック時のアメリカの行動を知っておきたい人だと思う。

リーマンショック以前は、アメリカはなされるままにショックを受け止めていた。

だが、リーマンショック以降、行動経済学が発達し、この『アニマルスピリット』に先回りする手法を数々編み出しており、特にFRBなどがその戦略を何度か実行して、PDCAサイクルのような、実行、チェック、改正のロールモデルを構築しかけている。

2020年のコロナショックはまさに、この『アニマルスピリット』制御が実験的に試行されて、しかもほぼ成功している。

この辺のアメリカのスタンスを学ぶことで、トレーダーは特に恩恵を受けるだろう。

Q:アニマルスピリットの理論は、持続するか?

A:難しいかもしれない。今後、時間をかけて明らかになるとは思う。だが、人間の動物本能は、自然界と同じく、それほど多彩なパターンはないと思う。攻略できる可能性は、なくはない。

ただ、あくまで今回のコロナショックでの先回り戦略(利下げと金融緩和と現金給付のセット)は、世界の人々に「危機が来るとある意味美味しい」という、妙な期待感を抱かせてしまった。この辺が次のショックで「さらなるアニマルスピリット」によって、暴走する可能性は高い。

そういういたちごっこの側面が、コロナショックのおかげで浮き彫りになったと思う。

次の手を連続で撃ち続けると、さらなる大崩壊にもつながりそうな感じもする。

Q:投資をしていない人間の、本書の活かし方は?

A:正直言って、わからない。本書は金融を知らないと内容が難しい。単独で役に立たないと思う。

なので、今まで行動経済学の書籍(ダニエル・カーネマンやリチャード・セイラー)やそれに付随する書籍である『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ)などを読んでないと、あまり効果がない可能性がある。

むしろ、一般人にとっては、あまりも普通のことが書かれすぎていて、腹が立つかもしれない。

関連記事:人間の誤読・誤反応を徹底研究。直感(ファスト)と思考(スロー)の切り替えメカニズムを発見した悪魔の書籍『ファスト&スロー』(上・下)ダニエル・カーネマン

関連記事:「言いなり」の仕組みを簡単解説『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』ロバート・B・チャルディーニ 要約

しかも、結構何読書である。どちらかというと学術書の延長にある。

なので、本を読んだ効果を日常的に何か活かしたいと思うのなら、読んですぐ日常に役立つ『影響力の武器』あたりを読んでから読んでみるといいかもしれない。

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