読後の一手間で、記憶が定着し、行動が変わる。99%忘却するための読書はすぐに止めよう『読書は格闘技』瀧本哲史

オーディオブック

瀧本哲史(1972〜2019)

日本のエンジェル投資家、経営コンサルタント。株式会社オトバンク取締役(オーディオブック)、全国教室ディベート連盟副理事長等を歴任した。

東京大学を卒業後、同大学の助手を経てマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、エレクトロニクス業界のコンサルタントを担当。2000年より、多額の債務を抱えていた日本交通の経営再建に取り組む。主な著書に『君に友達はいらない』『僕は君たちに武器を配りたい』(2012年ビジネス書大賞受賞)など。

目次

  • イントロダクション
  • 心をつかむ
  • 組織論
  • グローバリゼーション
  • 時間管理術
  • どこに住むか
  • 才能
  • 大勢の考えを変える(マーケティング)
  • 未来
  • 正義
  • 教養小説――大人になるということ
  • 国語教育の文学
  • 児童文学
  • 読書は感想戦――あとがきにかえて

本書で登場する書籍(一例:たまたま私が読んでいたもの)

ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』

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エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる』

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トーマス・マン『魔の山』

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瀧本哲史『君に友だちはいらない』

関連記事:一見当たり前に見えることを、意外性や新しさを持って解説。今まで語られなかった組織論『君に友だちはいらない』瀧本哲史

『僕は君たちに武器を配りたい』瀧本哲史

関連記事:京大医学部生でさえ、未来を描けない。日本を襲う“本物の資本主義の正体”『僕は君たちに武器を配りたい』瀧本哲史

『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール

関連書籍:瀧本哲史推薦。イーロン・マスクの最大の敵・盟友の独占市場の作り方を学ぶ:『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール 要約

概要

本の“読み方”を軽視しない:読んだ本の「記憶の定着」と「行動化」

ほとんどの人が読書が嫌いだ。そして、読書をしても一回しか読まず、読んだ内容も、あるいは読んだこと自体でさえ、人は忘れてしまう。

本を読んでも実生活に活かせるかどうかはわからない。

というか、とても役に立つ本を読んで、どうやって社会に生かせばいいかわからない。

これらの上記が、普通の日本人が読書に向かって示す姿勢だと言える。

つまり、無駄な読書が、この世に充満しているのだ。

ではどうやって本を読む姿勢を作ればいいのか?そんな本はこれまで誰も書いてこなかった。そこに今回、著者の瀧本哲史氏がチャレンジしてみたのが本書だ。

切り口の異なる書籍を、読後効果で戦わせる 例:『人を動かす』VS『影響力の武器』

本書のスタイルとして、本の内容で本を比較するのではなく、本を読んだ効果で本を比較するというスタンスがある。そのほかにも、多種の書籍をいろんな切り口で比較していく。

この比較能力を取得することで、本の消化能力が飛躍的に伸びると、著者は考えている。

これによって、記憶の定着を促し、しかも本を読んだ効果を実際の行動に繋げることができる。

以下、本書の冒頭で例に挙げられた比較を記述しておく。

デール・カーネギー『人を動かす』=読んだ結果:人間行動の本(オモテ)

  • クチコミで広がり、広告宣伝がないまま50年以上ベストセラー(王道)
  • 1920〜30年代の世界恐慌を支え、全世界の行動様式改善に貢献
  • 驚くほど常識的な人心把握の本:話を聞くことがベース
  • 非科学的だが、驚くほど実践的
  • 心の問題が100年近く変わっていないこと示す

ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』=読んだ結果:人間行動の本(ウラ)

  • 人情、人心把握から、詐欺的なものまで扱う(裏道)
  • 相手の喜ぶことをしたら、お返しをするべきという“常識”を科学的に分析
  • 全ての実験結果が科学的に証明され、驚くほど実践的
  • 80〜100年くらいの寿命では変えることができない人間の特性を証明

上記のように『人を動かす』『影響力の武器』は、前者が堂々とした王道、後者がこっそりとした裏道の本ではあるが、結果的に同じテーマを扱っているのがわかる。

そして、このような分類ができるようになると、本の知識を使うべきシュチュエーションが、それぞれ違うのがわかると同時に、その時の具体的なアクションも見えてくる。

例えば、『人を動かす』は、経営者が朝礼などで部下にノルマ達成を促すのに有効で、『影響力の武器』は、困難な交渉ごとの場面で有効である、などである。

何よりもこの分類と対決によって、記憶に定着しやすくなる。

このような、読書後のひと手間によって、脳の働きが何倍も違うことを証明したのが、本書『読書は格闘技』だと言える。大袈裟なタイトルだが、著者の言いたい読書への真剣さは、確かにその中に十分書かれており、そこが単なる書評本との差別化としても機能している。

Q:どのような人が読むべきか?

A:自分の読書が、質より量に傾きつつある、という自覚がある人。

現代は電子書籍やオーディブックなどで、飛躍的に読書効率を上げるようなツールが揃った。だが、それは時間×冊数の飛躍であって、理解力の飛躍ではないことを本書は物語っている。

そして、真実は人間は読んだ本の99%を忘れてしまうということだ。

それをどうにかして85%くらいにすれば、人生は変わるかもしれない。

そんなことが書かれている。だからつまり、本を読まない人には最初から最後まで無意味である。せいぜい、瀧本氏の読んだ本の履歴を楽しむ程度で終わってしまう。

Q:瀧本氏の本の選定はどうか?

A:本書の中では、『文明の衝突』『歴史の終わり』などの結構難しい歴史的な名著も多い。60冊くらいある書籍リストは、いずれも大学入学以前に読んでいたということから、あらためて彼の見識の深さが把握できる。

しかも、それらの名著を、かなり批判的に解説もできているところがすごい。私にはなかなかできないことだし、そもそもそういうことは1〜2回の読書では難しい。

過去にも佐藤優の速読本で解説したが、読書は「繰り返し読む本」と「一読で済ませる本」「よなまくていい本」の識別が重要だ。そんなことについても、再度深く考えされる優れた選球眼を瀧本氏は持っていた。なので、著者の選定は、とてもいいと思う。

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