本作はアマゾンオーディブルとオーディオブックで読むこともできます。
著者紹介
デイル・ドーテン(1950年生まれ)
アリゾナ州立大学大学院(経済学)卒業後、スタンフォード大学大学院で学ぶ。
1980年に若干29歳でマーケティング・リサーチ専門会社、リサーチ・リソーセス(Reserch Resources)を起業。マクドナルド、3M、P&G、コダックなど大手優良企業を顧客に持つ全米でもトップ・レベルの会社にまで成長させる。
1991年、新聞に執筆したコラムが好評を博し、執筆活動を開始。現在米国を代表する人気コラムニスト。氏が執筆するコラムは、 100社以上の新聞社に配信され、毎週1000万人以上に愛読されている。執筆活動のかたわら、企業講演、従業員訓練やキャリア・セミナーを主催し、意思決定論、人材育成、キャリア・アップによる能力開発や成功をテーマに独自の理論を展開している。
目次
プロローグ 良い会社が持っているもの、それは一握りの宝さ。
第1章 もっと良くできないかなあ?
第2章 目指すべきは、非常識な行動なんだ。
第3章 最初の解決策は人からの借り物、二つ目の解決策は常識の範囲内、三つ目の解決策が天才のアイデアだ。
第4章 最高の社員が人とは違う考え方をするのは、人より多くのことを知っているから。彼らが人より多くのことを知っているのは、人より多くの質問をするからだ。
まとめ 与えられた仕事以外のことをすることで、彼らは職場全体の意識を高め、周りの人をも向上させるからなのです。
エピローグ ぜひ試してみてほしい。まずは何か“完璧な”ものを見つけ、それをより良くすることから始めるのだ。
概要(ブログ主の勝手なまとめ)
1作目と2作目のまとめをしながら、イノベーションに触れる
一作目の『仕事は楽しいかね?』、二作目の『仕事は楽しいかね?2』の語り部だった経営者で富豪の老人マックスが、自分の孫(ボク)とその彼女(アンジェリーナ)と会話をする形で本書は進む。
マックスは、何かの賞を受賞したことによって、数日後、人前に出て「理想的な経営者とは何か」というスピーチをすることになっており、そのネタを探している。
だが、全然見つかる気配がない。ネタがない。喋りたいことがない。
そこにたまたま孫と彼女がやってきたという展開だ。
テーマは「イノベーション」:「セクシーな力」とは何か?
本書でマックスの孫が『セクシーな力』という単語を連発する。
これは、孫が若くてポジティブで馬鹿っぽいというのがあるが、やがて読者はこの『セクシーな力』にある意味が宿ってくるのがわかる。その『セクシーな力』とは、周囲の人間を引き込む力であり、かっこよく助けを求める能力という風に、物語が進むにつれなっていく。
リーダーは、自分の救済者を探す仕事が重要である
老人マックスは、自分がいまさら「理想的な経営者」だなんていったい何を話していいかわからない、と悩んでみせる。
そもそもこの困りごと相談自体が『セクシーな力』の始まりだというのが最後にわかる。
人は「他人の目」「他人の脳」になることに喜びを感じる:ただし、導入が必要
本書で老人マックスがリーダーに求められている能力で重要だと思っているのは、常に壁や限界を知っていることだという。だが、その壁や限界の乗り越え方を考えてはならないという。
必要なのは、誰と取り組むのか、が大事だという。
本書ではその工程や具体例が、孫と彼女との対話で語られていく。この根底には、人間の神話能力として「人は『他人の目』『他人の脳』になることに喜びを感じる」という考えがある。
精神論や倫理面が過剰に強く押し出された絵空事にも確かに思えるが、結局のところ、新しい仕事の創出はこの2点に集約し、AIやIT技術が進んでもこの流れは変わらないというのが、なんとなくわかる。それに絵空事に見えるのは、このシリーズが過剰に穏やかな文体だというのもあるだろう。
KISSのジーン・シモンズの例を用いて、非常識な行動の重要性と金銭効率性の話もする

本書冒頭で、あのKISSのジーン・シモンズのエピソードが語られる。
元事務員としてキャリアをスタートしたシモンズは、自分の経営する会社の社員たちを労うために、↑写真のような格好をして、社員たちと定期的に記念写真を撮るという。
これによって得られる効果は何か?
それは経営者の非常識的な考えが自分達を支えている、という思想であり、この社長がわざわざライブをすれば数億稼げる時間を注いで、無駄な労力を使ってくれる経済的な不適合性だという。
このサービスによって、シモンズの会社の従業員たちはシモンズのためにまた懸命に仕事をしようとするようになる、というそういうエピソードだ。
この話はマックスの孫からマックスに語られるが、マックスは大喜びをする。
「大事なのは会社の社員です」という偽善を、ジーン・シモンズの非効率な行動を通して考える
このエピソードは、一般的な経営者の性質も同時に表しているという。ただ、誰もがシモンズのように上手に振る舞えてはいないという。
会社という組織というのは、中心には経済的な活動がある。だが、実は非経済的なものもとても多いということを考慮して、お互いにお互いを認め合うということが必要だという。
実にアメリカらしくない考えだが、本作が長期的なスタグフレーションが続いた1970〜80年代を抜けた1990年代にヒットしたのは、なんだか興味深い。ある意味、本シリーズは、アメリカ人に仕事をする根源的なものを再教育した書籍なのだろうと思った。
Q:どんな人が読むべきか?
A:1作目と2作目に比べて、だいぶ実務的な側面が少ない。
それに、内容に関しても前二作は経済的貧困だったり、業務の猥雑さや忙しさ、人間関係の苦しさといったストイックな面があったが、本作はかなりのんびりとした内容だ。
よって実務に追われている人には適さない。
1作目、2作目と読み進めた人は読んでも違和感がない。
いきなり本作を最初から読むと、シリーズが薄っぺらくて馬鹿げたものに思えるかもしれないから、この本からはスタートしない方がいいだろう。
結論としては、やはり前作を読んだ人が読むべきだと思う。
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