目次
- はじめに
- 序章 功を奏したITによる新型コロナ対策
- 第一章 私をつくってきたもの
- 第二章 デジタル民主主義とソーシャル・イノベーション~誰もが政策に寄与できる社会
- 第三章 ITは教育をどのように発展させるか~プログラミング思考を身につける
- 第四章 AIが開く新しい社会~デジタルは人のためにある
- 第五章 日本へのメッセージ
著者情報
1981年生まれ。台湾の政治家。2005年、Perl 6(現:Raku)のHaskellによる実装のPugsを開発したことで知られ、「台湾のコンピューター界における偉大な10人の中の1人」とも言われている。2016年10月に台湾の蔡英文政権において35歳の若さで行政院に入閣し、無任所閣僚の政務委員(デジタル担当)を務めている。
著者インタビュー動画
本書を読むべき人
10歳未満(性的認識が未確定)の子供を持つ親
LGBTの子供を持つ親
AIの知識を具体例を踏まえ、正しく知りたい人
オードリー・タンに興味のある人
LGBTが政治家になる工程を知りたい人
本の概要(著者の特徴)
AIについての正しい知識が書かれている
蔡英文(初の女性総裁)に採用されるまで経緯が書かれている
LGBTデビューは遅い。21歳で初めて性的マイノリティーとして自覚をする
中学校退学になる。その裏での父と母の行動・思考がわかる
プログラマーになる工程(非デジタルネイティブ世代)
シリコンバレーとの繋がりが書かれる
AIという共産主義的技術を使いこなす民主主義者の誕生
本書は『日本人のためのデジタル未来学』や『自由への手紙』などで知られるオードリー・タンが、日本の出版社からじかに依頼を受けた書いた、日本出版デビュー作である。
誰一人、取り残さな無い政治:従来の政治学に囚われない
著者の掲げるテーマで「誰一人、取り残さな無い政治」というものがある。
AIで人海戦術でしかできなかった作業を代替できる技術のため、使う人間の思考が保守的であれば当然「共産主義」として働きやすい。しかしながら、著者は性的マイノリティーであり、中学校も中退。通常のルートとは全く違う生い立ちのため、常に少数派だったという意識がある。
そのため、共産色の強いAIという技術を用いながらも民主主義を標榜できる。
というのが、本書の根底的な主張となる。
LGBTデビューは遅い。マイノリティの子育てに必要なこと
オードリー・タンというのは著者の英語名で、実際の名前は「唐 鳳」という。
改名したのは、性的マイノリティとして生きていくの覚悟した21歳の時。
それまでは、特段、性別意識してこなったという、結構驚きの事実が書かれている。
これは、おそらく親の教育方針だと思われる。
本書では、著者の親の教育について章立てはされていないが、パラパラと結構な量で語られている。ここが、一般読者に取ってポイントではないかと思う。著者の親は、おそらく子供が性的マイノリティーだと知りながらそれに触れないできたのだ。
当事者でなく、説明もうまくできなければ、あらかじめ子供に関与するのではなく、この著者の親のように、語らない、というのも、教育として正しいのかもしれない。
LGBTの子供を持つ、もしくは持つ可能性のある(10歳未満)の子供を持つ親には、かなり、役に立つ書籍であると思う。
AI(大衆操作)に詳しければ、政治を知らなくても政治家になれる
本書を読むとわかるが、著者は政治の知識がほとんど無い。
しかしながら、AIで情報や人をコントロールして政治家と同じ成果を出している。これは、おそらく著者を採用した蔡英文(女性総統)が予測してことでは無い。結果的にそうなっている可能性が高い。しかしながら、AIの運用と政治は実は似ているところがあるということが本書を読むとわかる。
変わった子供を育てるために周囲ができること
本書のまとめとして、やはりこの「周りと違う子供をどう育てるか」が重要だと思う。
本人が意図して、AIを使う政治家になったわけでは無い。その意味で、本書を読む時、オードリーのようになりたい、と考えて読むのはお門違いである。しかしながら、親の目線で考えると「彼のような人がドロップアウトせずにここまできた」という事実を見る本として機能する。
子育てに悩む人は、そういう意味で、ぜひ読んでもらいたい書籍だ。