PayPayは、ドル覇権の崩壊で“デジタル人民元”アプリへと変わる仕様。日銀黒田東彦と鈴木俊一財務大臣はアメリカと欧州に逆らった『有事の金。そして世界は大恐慌へ』副島隆彦

投資

著者について

副島隆彦(そえじま たかひこ、1953〜)

福岡市生まれ。本籍・佐賀市。早稲田大学法学部卒業。

大学卒業後、銀行員(インタビューなどで英国:ロイズ系の金融機関勤務だと答えている)として英国に勤務するも3年ほどで退職し、帰国する。

その後、代々木ゼミナール講師(受験英語)、常葉学園大学教授を歴任。

専門はアメリカ政治思想と政治史。

選挙や米国政治人材に詳しく、オバマ当選(2008)、トランプ当選(2016)の予測を的中させたが、バイデン当選(2020)を外す。リーマンショックを予測した『連鎖する大暴落』、『逃がせ隠せ個人資産』、『世界権力者シリーズ』はベストセラーに。

事前情報

本書は金(ゴールド)のトピックを主要テーマとしてあるが、基本的には徳間書房から、年に2回ほど定期的に出版される世界金融・政治経済シリーズである。

金(ゴールド)と副島隆彦氏

副島隆彦氏は、私の知る限り「金を買え」ということを初めに言った評論家である。最も古い書籍として、『実物経済の復活』(2003)がある。その点で日本で一番信用度が高い評論家だと言える。

目次(内容抜粋形式で)

●金は来年2023年に2万円を超えるだろう
●リデノミネーションでタンス預金が没収される
●やがて1ドル=1.2円になるだろう
●欧米の対ロシア制裁で「戦時経済」に突入した
●パウエルFRB議長は利上げができずに辞めるだろう
●為替は今は円安だがいずれドルが暴落して円高に
●「資源 対 ドルの戦い」が始まった
●これから「ブレトンウッズ3」の時代に移行する

ブログ主の勝手なまとめ

日本の独立的行動を読み解く:日銀総裁・黒田東彦と鈴木俊一財務大臣、そして岸田文雄

前半は、本書のタイトルにある通り金について書かれているが、その予測自体がこの著者の場合は的中し続けているため、これまでの本を読んでいる人は特に新しさはない。

それよりも後半部分に記載された、2022年の外交イベントでの日本人政治家(官僚)の動向分析が凄い。

G20でロシアの財務大臣が出席した時、G6(米、欧州、カナダ、豪州)は退出したが、なんと日本の出席者である日銀総裁・黒田東彦と鈴木俊一財務大臣は、中国やインドの要人と共にその場にとどまるというアクションを選択したのだ。このことに関して、日本での報道は少なく分析はほぼない。

この辺の情報は、本書でなければ得られない情報だと思う。

日銀総裁・黒田東彦と鈴木俊一財務大臣

日銀が無制限オペを続ける理由:0.3%以上に利回りが上がると起きること

また、後半では副島氏と現役債権専門トレーダーとの対談もあり、ここでは“なぜ日本だけが利上げをしないのか?”について、ほぼ完璧な解説がされている(私が納得したという意味で)。

以下が、その理由だと言える

  • 日本企業が全般的に利益率が低く、0.3%でも利息が払えない
  • 地銀が売りまくったノックイン債が0.25%以下でデフォルトする
  • 日銀の自己資本はたったの9兆円。上記二つの負債を支払えない

これらに関しても、詳細についてはその対談を見てほしいと思う。

世界的な利上げのトレンドの中で、なぜ日銀があのような他の国がどこも取っていない対応をするのか?が、実に明瞭に書かれており、特に日銀黒田総裁の発言との連動性の高さで納得できる。

ドル覇権の崩壊で、PayPay(ソフトバンク)は “デジタル人民元” へと変わる

また、日本がドル覇権が崩壊する際には、どのように自国通貨制度を維持すべきか、そして、実際、今自国通貨の保全活動としてどんなことが裏で行われているかも書かれている。

特に驚くべき内容としては、ソフトバンクの決済システムPayPayに関する記述である。

PayPayは他の決算システムに先駆けてさまざまなシステムが実装されることで知られている。税金の支払いに初めに採用されたのもPayPayだし、何より日本で最も導入範囲が広いのはPayPayである。

そんなPayPayの技術は、実は中国のアリババ経由で中国産のものが使用されている。

将来的にこのPayPayのインフラ構造を利用して手数料なしで決済できる形で、デジタル人民元の決済が行われる予定になっているという話が、副島氏とトレーダーの対談で明らかになっている。

その他にも、ウクライナ・ロシアの話題や、日本の本当の意味での電源供給に関しても

本書は、ここ最近精度が落ち気味だった副島氏の本の中では、久しぶりに読み応えと、新しい知見を得られる作りになっていると実感した。

アマゾンでは、出版してしばらく経つがずっと100位圏内に残っており、同氏の本にしては珍しく、肯定的なレビューがすぐにたくさんついた。

私個人としても、とてもお勧めできる内容だと思う。

Q:どんな人が読むべきか?

A:日本の既存メディアの情報を疑うことに慣れている人で、ある程度金融や政治の難しい話について行けるのが、前提条件だと言える。

副島氏の文章は非常にわかりやすいが、引用の記事や単語が難しい。

また、トレーダーとの対談ではかなり専門的な内容に踏み込むため、常にこのような金融本を読み慣れていないと、対応できないと感じる。注釈や解説も少ない。

Q:どのくらいの信用度か?

A:確かに、副島氏はここ5〜6年で予想を外すことが増えてきた。だが、海外から新しい情報を仕入れたり、他の本では触れないような分析が多い時は、彼の本に多くのトレンドフォロワーがついて、後日、それらの情報が、だいぶ遅れて主流メディアでも取り上げられるケースが多く、本書はそれにあたる。

簡単にいうと、副島氏の本の特徴は以下の通り

  • 同じ内容を繰り返し言っている時は、外す(手抜き)
  • 新しい情報が書いてある。当たるし、後々主流となる(苦労して書かれている:今回はこちら)

よって、かなりお買い得な感じがする本ではないかと感じる。

金に関して読みたい場合は、副島氏の“金(ゴールド)専門書籍”を読むことをお勧めしたく、本書のメイントピックはあくまでアメリカと中国の政治であり、そこには気をつけたい。

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