著者紹介

C.K. プラハラード(1941〜)
企業および社会の戦略家、教育者、作家。ミシガン大学スティーブンM.ロスビジネススクールのポールアンドルースマクラケン著名な大学教授。2007年、英タイムス紙が選ぶ「世界で最も影響力のあるビジネス思想家」の第1位を獲得。イーストマン・コダック、AT&T、ハネウェルなど数々の国際企業でコンサルタントをつとめる。
目次
- 日本語版 監修者のまえがき
はじめに - PART 1 知られざる巨大市場
第1章 経済ピラミッドの底辺に眠る巨大市場
第2章 BOP市場におけるイノベーション
第3章 世界規模のビジネスチャンス
第4章 富を創造する経済エコシステム
第5章 市場を機能させる条件
第6章 社会を変革する経済開発 - PART 2 ケース・スタディ――12の事例に学ぶイノベーション
1.BOP市場への挑戦――カサス・バイア、セメックス
2.問題をいかに解決すべきか?――ヒンドゥスタン・リーバ・リミテッド
3.常識を覆す解決策――ジャイブル・フット、アラビンド・アイ・ホスピタル
4.制度全体を革新する――ICICI銀行、ITC e-チョーパル、EIDパリー
5.イノベーションを世界に広げる――ボクシーバ、E+Coとテクノソル
6.BOP市場を支える行政サービス――アンドラ・プラデシュ州のeガバナンス
貧困市場戦略を網羅的にフォローした著書
非常に長く、難しい著書でありながら、先進国の人間は底辺のものまで含め必読書籍である。なぜから、貧困市場の戦略を知ることで、自身の国を貧困させないためのガードとなるからである。
アマゾン書評も的外れ=読めた人がいない 本書の真の凄さ
前半は、貧困市場戦略の概要と理論化できた部分について触れられている。
最初に断っておくと、BOP市場戦略(貧困市場戦略)は、包括的な理論家がまだされていない、学問的には未知の領域だと言っていい。しかし、本書を読むとわかるが、その理論化は近い。かなりのところまで出来上がっていて、継続的に結果を出している企業が存在している。
Q:なぜ、理論化は近いと私が思うのか
A:SDGsを欧米が率先して推し進めているからだ
BOP市場の攻略理論は、SDGsの思想に近いことを本書を読んだある一定の知識の人間は気がつくはずだ。ああ、あのSDGsは、企業が妥協ラインを探しながら貧困国を支配し、稼がせて搾取する概念だと、日本人のような元先進国はわかる。
そのせいか、本書ではSDGs関連の記述をおそらく避けている。
後半の事例の読み解きが重要
後半では電力、石鹸(衛生産業)、義足・眼科(医療市場)など、さまざま具体例が、緻密なインタビューや数字の構築によって語られる。読んでいて、背筋が凍ってくる。そして、気がつけば最後には『eガバナンス』『マイクロファイナンス』という二大キーワードにつながる。
企業がSDGsで成功すると政治力を得る
外国の企業が、とある市町村団体の役所を経営するような姿を想像できるだろうか?
もしできる人は、それがどれだけ恐ろしいことかということも同時にわかるだろう。
しかしながら、今、世界は間違いなくその方向に向かっている。
例えば、本書のPART 2 ジャイプールフットという企業の例を考える。
ジャイプールフットは、通常8,000ドル(80万円)ほどかかっていた義足市場に、参入。現在は優れた義足をわずか8ドル(800円)で提供する企業となっている。しかもそれだけではなく、貧困層の義足作成のための入院・メディカルチェックなどを自己負担し、利潤が出る仕組みを作っている。多くは政府や大学との提携である。
章の後半では、この企業の”政治的な”影響力の強さまでが語られる。このレベルの事業を行えるようになると、国政レベルでの影響力が半端ではない。
貧困市場の2大前提「マイクロファイナンス」と「労働提供」
貧困市場で、高額な商品、例えば住宅や自動車といった市場で商品を購入してもらうには、その国もクレジットカード・信用市場の法整備を企業が誘導する形で推し進めさせる必要がある。その前提として、国や自治体は「成功イメージ」を欲しがる。それが、先進国の現場の視察などで実施される。
これらの一連のことを本書では「マイクロファイナンス」とよんでいる。
また、それでもその国の通貨や物価が低すぎてコスト面で折り合いがつかない場合は、家を売るのではなく、板や釘を販売して貧困者たちに作らせる「労働力提供」を念頭した市場設計がなされる。そして、BOP戦略が導入されると、最終的に貧困者たちは、先進国や白人たちのために、超低価格で家を作る存在になって、気がつくと切り替わっている。
このようなパラダイムシフトは、以前では戦争によって引き起こされることが多かった。戦後の日本やイギリスによるアヘン戦争後の中国がその好例である。これをSDGsと産業の力で、最後まで設計し切った経緯がこの『ネクストマーケット』では語られてる。ただし、何度もいうがこの思想・構想は、まだ理論化には至っていない。だが、理論はできつつある。本書を読むとわかる。
いかがだったでしょうか。ぜひ、参考にしていただきたい。
先進国のビジネスマン(商社・メーカーなど)は必須の知識が豊富に込められている。